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鎖骨骨折の慰謝料相場

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

鎖骨骨折の治療のために、仕事や学業、プライベートの時間を奪われるだけでなく、痛みや後遺症の懸念等、被害者の方が抱える苦痛や負担は計り知れません。それらについて、きちんと賠償を受けるべきです。 ここでは「交通事故による鎖骨骨折」に着目し、その特徴や懸念される後遺症、ひいては、かかる損害の賠償に際し、納得のいく解決を目指すためのコツ等を解説していきます。

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鎖骨骨折とは?

鎖骨は比較的骨折しやすく、その比率は全骨折事例の10%を占めるといわれています。 鎖骨骨折には、受傷部位ごとに主に次の3種類があります。(人間の骨の部位は、身体を大の字にして、中心部に近い端を近位端、遠い端を遠位端、真ん中あたりを骨幹部といいます。)

  • 鎖骨近位端骨折:3種類の中で最も受傷頻度が少ない
  • 鎖骨遠位端骨折:小骨の形状が平たいため、偽関節(骨折部分の癒合不全)のリスクが高い
  • 鎖骨骨幹部骨折:遠位端よりは癒合しやすいため、ズレは生じるものの、偽関節に至るリスクは低い

合併する可能性のある損傷

鎖骨の周りには、血管や神経、肺といった重要な組織があります。事故で激しい衝撃を受ける等して重度の骨折をした場合、周囲の組織への損傷を伴い、派生する傷病を誘発してしまうおそれがあります。例えば、稀なケースではありますが、鎖骨付近の神経である腕神経叢(わんしんけいそう)を損傷し麻痺が残存する「腕神経叢麻痺」等が挙げられます。 また、骨にズレが生じたまま癒合してしまう「変形治癒」や、癒合不全で患部が不安定になってしまう「偽関節」、痛みを伴う「関節症」等を合併するおそれもあります。

子供が受傷した場合

大前提として、子供の骨は大人に比べて再生・形成能力が高く、自家矯正力(自力でもとに戻ろうとする力)が優れているという特徴があります。そのため、子供が鎖骨骨折を受傷した場合の治療は、ほとんどのケースで保存療法が採択されます。 ただし、子供は遊び盛りで自制が効かないことも多いため、周囲の大人がきちんと見守ってあげることが大切です。

症状

鎖骨骨折を受傷すると、骨折部に痛みを伴い、肩を上げられない程の痛みを感じる方もいらっしゃいます。症状は多岐にわたり、患部付近が腫れたり、骨折した骨が突出して目視できたりすることもあります。 また、受傷直後ではなく数日経ってから、骨折部の周辺にうっ血のような痣ができることもあり、圧痛を感じることもあります。さらには、患部周辺の神経損傷を伴うことにより、鎖骨から遠い手に痛みやしびれが生じるケースもあります。

鎖骨骨折につながる事故原因

比較的発生頻度が多い鎖骨骨折は、交通事故においても散見されます。バイクや自転車といった身体がむき出しの状態で肩周りを地面やガードレールに強く打ちつけたり、激しい衝撃で車のハンドルに肩周りを強打したりすることで受傷します。交通事故に留まらず、ラグビーや柔道等のスポーツや、高所からの転落等においても、肩に強い外力が加わることが鎖骨骨折につながる要因となります。

検査方法

鎖骨骨折の検査では、他の部位の骨折と同様に、基本的にX線(レントゲン)検査が行われます。しかし、患部周辺の血管や神経を損傷している懸念もあるため、必要に応じてCTやMRI検査が行われる場合もあります。 重要なのは、医師の診断のもと、事故による受傷からできるだけ早く必要な検査を受けることです。

治療方法

鎖骨骨折の治療には、保存療法と手術療法がありますが、ほとんどの場合で前者が採択されます。というのも、鎖骨はもともと骨折しやすいものの、形成・再生能力が優れた骨であるという特徴があるためです。 保存療法では、ズレた骨をもとの位置に戻すようにクラビクルバンド(鎖骨バンド)等で固定していきます。主に近位端骨折や骨幹部骨折の場合に採択され、痛みがひどいと鎮痛薬を併用することもあります。 手術療法は、骨折の程度が重症な場合に採択されます。周辺組織の神経損傷を伴って神経障害や循環障害を合併しているケースや、腕の重みにより骨癒合が困難な遠位端骨折のケースで施術されることが多いです。 いずれも、おおむね2~3ヶ月程度で癒合するため、その後はリハビリを行い、完治を目指します。

保存療法中に注意すること

鎖骨骨折は、手術を要することが少なく、治療として採択されるのはほとんど保存療法です。完治を目指すためには、保存療法中の生活やその後のリハビリが非常に重要となります。ポイントは、日常生活における「心がけ」です。 例えば、入浴時には脱衣したり身体を洗ったりしなければなりません。その際の負担軽減のため、着衣する洋服は前開きのものにする、身体を洗う際には健側の手を使用する等、小さな心がけが大切です。また、腕を90度以上に上げる等、患側に負担がかかることは避けましょう。

交通事故で鎖骨骨折をした場合の慰謝料の計算例

鎖骨骨折の際に支払われる慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料の2種類があります。 入通院慰謝料は入通院による精神的苦痛に対する賠償、後遺障害慰謝料は後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償です。 また、これら慰謝料を算定する基準も、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。 「鎖骨骨折」により「通院期間3ヶ月(90日)・実通院日数80日・後遺障害等級12級6号」となった場合を例にして、各基準での慰謝料の計算結果を見ていきましょう。

自賠責基準

自賠責基準は、被害者の損害を最低限保証するものであるため、基本的には3つの基準の中で1番低い基準となります。 1日4300円×通院日数(通院期間と実通院日数×2のいずれか少ない方)が入通院慰謝料の計算方法となりますが、治療費、交通費、休業損害その他全ての傷害に対する損害賠償額と合わせて120万円が上限となります。

入通院慰謝料 自賠責基準で入通院期間を算出するには、日額4300円に、入通院期間か、(入院期間+実通院日数)×2 のいずれか少ない方をかけます。式にすると、 「入通院慰謝料=日額4300円×{入通院期間or(入院期間+実通院日数)×2}」 となります。 例の場合、入通院期間90日<実治療日数160日(80日×2)なので、 「入通院慰謝料=4300円×90日=38万7000円 となります。

後遺障害慰謝料 後遺障害等級12級の自賠責基準での後遺障害慰謝料の相場は、94万円になります。

※自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。

弁護士基準

弁護士が示談交渉や裁判をする際に使用している基準です。交通事故の過去の裁判例をもとに設定された基準であり、裁判基準ともいわれます。 弁護士基準で入通院慰謝料を算定する場合は、入通院日数ではなく、入通院期間をもとに計算します。 3つの基準の中で、基本的にもっとも高額な基準となります。

入通院慰謝料
弁護士基準では、入通院慰謝料を算出するための手段として、赤い本(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』)の入通院別表Ⅰか別表Ⅱを用います。 基本的には別表Ⅰを用いますが、むちうち等、軽い打撲や軽い挫創(傷)で他覚所見がない場合等は、別表Ⅱを用います。

通常の怪我の場合【別表Ⅰ】

通常の怪我の場合【別表Ⅰ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 AB 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合【別表Ⅱ】

むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合【別表Ⅱ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A’B’ 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

弁護士基準で入通院慰謝料を算出するときには、表をもとに、入通院期間を基礎として計算します。例は、画像等により診断が可能な、他覚所見のある傷害のため、別表Ⅰを用います。 入院はなく通院のみ3ヶ月の場合なので、別表Ⅰの表の左端に位置する縦方向の軸を確認します。表によると、入通院慰謝料は73万円となります。

後遺障害慰謝料 弁護士基準を用いた場合の後遺障害等級12級の後遺障害慰謝料の相場は、290万円になります。

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鎖骨骨折を受傷した際に、弁護士法人ALGができること

高度な医学論争に対応

特に後遺症が残った場合、事故と後遺症との因果関係や、受傷した鎖骨骨折と後遺症との因果関係が問題になることが多く、医学的知識がなければ対応が困難です。交渉相手となる保険会社は顧問医を有しているため、医学的知識で劣ってしまうと適切な対応ができません。
その点、我が国で初めて専門事業部制を取り入れた弁護士法人ALGは、医学博士も在籍する医療過誤事業部を有し、交通事故事業部との連携を図りながら事案に取り組むことが可能です。

治療や検査、リハビリについてのアドバイス

交通事故で鎖骨骨折を負った場合、完治することが理想ですが、後遺症が残ってしまうおそれもあります。主治医は治療方針を決めてはくれますが、治療後の後遺障害等級認定のことまでは考えてくれません。そのため、後遺障害等級認定の申請時になって必要な検査を受けていないことが判明する等して資料が足りないと、適切な等級認定が得られない場合があります。
この点、交通事故事案を多数取り扱う弁護士は、その豊富な経験から、後遺障害等級認定を見据えた的確なアドバイスを提供することが可能です。

後遺障害等級認定の申請・異議申立て

後遺障害等級認定の申請をする際に、保険会社や医師に任せきりでは適切な後遺障害等級認定が得られない場合があります。
実際に、弁護士が骨折箇所のX線・CT・MRI等の画像を見て主治医と協議する際、主治医が気にしていなかった点を指摘できることもあります。
後遺障害等級認定の申請や異議申立てを適切に行うには、主治医と協議し、より良い診断書を書いてもらうことが重要です。そのためには、医療問題に強い弁護士に依頼するのが良いでしょう。

示談交渉

鎖骨骨折によって重い後遺症が残った場合、裁判になる可能性が高いため、保険会社との示談交渉の際に裁判をすることも辞さない構えをみせる必要があります。
裁判では医学論争になることもあり、医療問題に精通していない弁護士では示談交渉の場で「裁判をしましょう」と迫力のある主張をすることは困難です。
したがって、示談交渉においても後遺障害等級認定の申請や異議申立てを行う場合と同様に、医療問題に強い弁護士に依頼すべきです。

残る可能性のある後遺障害

鎖骨は骨の再生能力が高いため、予後が比較的良いといわれている鎖骨骨折ですが、骨癒合が進んだとしても、肩の可動域が制限されてしまう、鎖骨が変形してしまう、骨折した部分に痛みやしびれが残ってしまう等の後遺症が残る場合もあります。 後遺症が残ってしまった場合、後遺障害慰謝料を受け取るために後遺障害等級認定を受ける必要があります。鎖骨骨折で認定される可能性のある後遺障害のうち、主なものとして、肩の可動域制限・変形障害・神経症状の3つの後遺障害について、次項より説明していきます。

肩(肩関節)の可動域制限

交通事故で受傷した鎖骨骨折による可動域制限が生じると、機能障害として肩に症状が残存してしまうおそれがあります。肩の可動域制限とは、腕の上下運動や伸縮運動に制限が生じることや、痛みが伴って思うように動かせなくなってしまうことをいいます。発症や因果関係の立証が困難な後遺症のひとつであり、後遺障害として等級認定を受けるためには、可動域測定値を裏付ける他覚所見と、一貫した自覚症状の証言記録、適切な頻度の通院等が重要となります。

認定される可能性のある後遺障害等級
等級 障害の程度
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

いずれの後遺障害等級に認定されるかは、可動域の制限の程度や人工関節等の使用の有無等により判断されます。 「8級6号」が認定されるのは、肩関節が全く可動しない「強直」という状態であるか、これに近い状態である場合、人工関節等を使用しても肩関節が全く可動しない状態であるか、これに近い状態である場合等です。 「10級10号」が認定されるのは、肩関節の可動域が通常(後遺症が残っていない方の肩関節の可動域または正常な人の肩関節の可動域の平均値)の50%以下の場合です。 「12級6号」が認定されるのは、肩関節の可動域が通常の75%以下の場合です。

鎖骨骨折による変形障害

鎖骨骨折により、鎖骨が変形した態様のまま残ってしまう、変形障害を負ってしまう場合があります。治療方法が手術ではなくバンドで固定する保存療法であった場合に、変形障害を残してしまうことが多いです。

認定される可能性のある後遺障害等級
等級 障害の程度
12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの

「12級5号」が認定されるのは、服を脱いで裸体になったとき、鎖骨の変形が明らかにわかる程度のものである場合です。レントゲンといった画像でしか鎖骨の変形がわからない程度のものである場合は認められません。そのため、画像で鎖骨の変形がわかる、つまり他覚所見があること、そして外見上明らかに鎖骨の変形がわかる程度のものであることの両方が「12級5号」が認定されるためには必要になります。

鎖骨骨折による神経症状

鎖骨骨折のため治療を行い、症状固定してもなお骨折した部分に痛みやしびれといった神経症状が残ってしまう場合があります。

認定される可能性のある後遺障害等級
等級 障害の程度
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

「12級13号」が認定されるのは、画像等の他覚所見があり、神経症状があることを医学的に「証明」できる場合です。一方、画像等の他覚所見がない場合は、「14級9号」が認定されるかどうかを判断することになります。 「14級9号」が認定されるかどうかは、神経症状が受傷者の単なる故意の誇張ではなく、神経症状があることを医学的に「説明」できるかどうかにより判断されます。

鎖骨骨折の治療に専念するために経験豊富な弁護士に相談しましょう

鎖骨は対になった比較的細い骨ですが、肩甲骨や胸骨等をつないだり、周辺に大切な組織が存したりするとても重要な骨です。骨折してしまうと、痛みやしびれ、動かせる範囲の制限、変形といった後遺症のリスクが生じます。 交通事故では、手続や相手方との交渉において、不安や不快な思いをされる方も少なくありません。治療やリハビリに追われる中でご自身だけで解決しようとせずに、ぜひ経験豊富な弁護士に相談しましょう。 「弁護士費用特約」をご存知でしょうか?ご自身が加入している任意保険の約款に付帯されていれば、実質弁護士費用の負担なくご相談・ご依頼いただける特約です。もし弁護士への相談を悩む要因のひとつが弁護士費用であれば、ぜひご自身の約款をご確認ください。 納得のいく解決の近道は、交通事故事案の豊富な経験を活かせる弁護士に依頼することです。ぜひ、無料相談から検討されてみてはいかがでしょうか。

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