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骨挫傷は後遺障害に認定される?

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

交通事故により骨折や脱臼といった怪我を負ってしまい、関節の機能に障害が残ってしまうことはよくあります。 骨挫傷という言葉が耳慣れないと思いますが、骨挫傷と診断された場合、後遺症が残ることはあるのでしょうか? 後遺障害等級認定の可否に着目しながら、説明していきます。

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骨挫傷と診断された場合の対処

骨挫傷とは、強い衝撃を受けたことで、骨の連続性を保ちつつも内部組織が損傷し出血してしまった状態をいいます。混同しがちな症状に骨折がありますが、「骨の連続性の有無」が大きな違いとなります。骨挫傷は、骨折に至らない程度で骨の内部が傷ついている状態をイメージすると良いでしょう。 診断後は、病院で適切な治療を受けることが重要です。軽症だと1週間程度で完治する場合もありますが、重症だと完治するまでに2~3ヶ月近くかかることもあり、場合によっては治りきらずに後遺症が残ってしまうおそれもあります。 単に適切な治療を行うのではなく、後遺症が残ることを想定し、後遺障害等級認定の申請を見据えた治療を行う必要があります。

骨挫傷の治療法

骨挫傷の基本的な治療法は、安静にすることです。受傷してから初期段階(24~72時間)の治療としては、RICE療法をとられることが多いです。 RICE療法とは、氷嚢等を患部に密着させ冷やしながら、患部を心臓より高い位置に上げ、血流の滞りによる鬱血を防ぎ安静にする治療法です。 他には、安静にすることと並行して、患部に超音波を照射する超音波治療や、標準より気圧と酸素濃度を上げたカプセル内で全身を加圧する酸素カプセルといった、骨に対して外部から働きかける治療法が選択されるようにもなっています。 さらに、こうした治療に加えて、骨内部の炎症を鎮めるために消炎剤等の投与が行われることもあります。

骨挫傷の症状

骨挫傷は、膝関節や足関節、手指の中手骨といった、屈曲する(関節を曲げた)際に動く部位に生じることが多いため、屈曲時痛みを伴う傾向にあります。 また、安静時にも、骨内部の出血や炎症に伴う腫脹(腫れ)や熱感覚があります。

骨挫傷で認定される可能性のある後遺障害等級と慰謝料

骨挫傷では、骨内部の損傷により炎症や出血が起こり、痛みが発生します。 なお、膝関節や足関節といった関節部分に生じるケースが多いものの、可動域制限のような機能障害が認定されることはほぼありません。 そのような症状がみられる場合には、他の障害が合併して生じているおそれがあります。骨挫傷で認められる可能性のある後遺障害の症状は、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」もしくは、14級9号「局部に神経症状を残すもの」という神経症状のみです。

神経症状

神経症状とは、痛みやしびれ、麻痺などが慢性化している状態をいいます。 原因は神経の損傷や圧迫で、骨挫傷においても発生・残存する症状です。認定される可能性のある後遺障害等級としては、残存する神経症状について、医学的”証明”ができる場合には12級13号が、医学的”説明”に留まる場合には14級9号が挙げられます。ただし、もともと治癒しやすい骨の挫傷は、症状固定時には修復されて器質的損傷が所見できなくなることが多いため、ほとんどのケースで14級9号に留まる傾向にあります。

請求できる後遺障害慰謝料

骨挫傷が後遺障害として認められ、獲得した等級ごとに受け取れる後遺障害慰謝料は下記の表のとおりです。ほとんどのケースで認められる傾向にある14級9号においても、自賠責基準と弁護士基準で比較をすると、78万円もの差があることがわかります。

等級 自賠責基準 弁護士基準
12級13号 94万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

※自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

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骨挫傷で後遺障害等級を認定されるためのポイント

骨挫傷は骨内部の損傷のため、骨折とは異なり、通常のX線検査では確認できず、骨の異常確認に向いているCTでもなかなか確認できません。そのため、骨内部のように、水分の多い組織を確認するのに向いているMRIによって診断する必要があります。 神経症状として後遺障害等級認定を受けるためには、まずは痛みの原因をMRI等の画像検査で証明できるように準備することが重要です。加えて、受傷直後から一貫した痛みの訴えも重要です。 事故が重くない限り、MRI検査が早期に実施されるケースは少なく、痛みが継続するために医師の指示でMRI検査を行い、事故からしばらくたった後に骨挫傷が発見されることがほとんどです。 ただ、適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、痛みがなかなかひかない場合には、ご自身の症状をきちんと医師に伝えMRI検査をできる限り早期に実施できるようにしてください。また、医師から症状固定と診断されるまでは、3日に1回程度は、通院するようにしましょう。

骨挫傷の後遺障害等級認定に関するお悩みは弁護士へご相談ください

骨挫傷は、一般に2~3ヶ月で快方に向かうといわれているため、後遺症が残っていても次第に症状は消失するだろうと考えられ、後遺障害等級が認定されないケースが多いです。 しかし、実際に症状が残っているならば、後遺障害等級認定の申請を検討されるべきです。もっとも、被害者の方ご自身で後遺障害等級認定の申請手続を行ったり、異議申立てをしたりして適切な等級認定を受けるのは、非常に大変ですし、難しいといわざるを得ません。骨挫傷は、比較的軽度の怪我と軽視されがちですが、実際に被害者の方は日常生活を取り戻すことができず、苦しんでいます。 そのため、後遺障害等級認定は容易ではなく、適切な賠償を受けられていない相談事案が多数ありますので、お悩みの方はぜひ弁護士にご相談ください。 特に、医療に強い弁護士、後遺障害等級認定申請の経験が豊富な弁護士へのご相談をおすすめします。 医療に強く、後遺障害等級認定申請の経験がある弁護士であれば、後遺障害等級認定の可能性を高めるためにアドバイスができます。 適切な後遺障害の認定を受け、適正な賠償を受けるためにも、後遺障害等級認定申請の経験があり、医療問題に強い弁護士が集まる弁護士法人ALGにご相談ください。

骨挫傷に伴う神経症状で後遺障害が認められた裁判例

【名古屋地方裁判所 平成30年1月12日判決】

<事案の概要>

本事案は、横断歩道上を小走りで横断していた原告に対し、その右手方向から進行してきた被告の運転する普通乗用車が衝突し、原告が受傷したため、被告に対して損害賠償を請求したものです。 原告は、本件事故により、右肩腱板断裂、右上腕骨大結節剥離骨折等の傷害を負ったと主張しましたが、被告が否定したため争いとなりました。

<裁判所の判断>

裁判所は、以下の理由を挙げ、原告が、右上腕骨近位端骨挫傷の傷害を負ったと認められるが、腱板断裂(不全断裂)の傷害を負ったとは認められないと判断しました。 ①当初、原告の傷害について、A医師は腱板不全損傷、B医師は右上腕骨大結節剥離骨折とする診断をしていたものの、CT、MRI、超音波検査及び数種の神経学的検査の結果、「右上腕骨近位端骨挫傷」という診断に両名とも落ち着いたこと ②画像所見上、右上腕骨近位端骨挫傷の所見は陳旧性のもの(時間が経過しているもの)であったと認められるものの、撮影したのは事故から2ヶ月以上後であり、本件事故によって負った傷害であると認めても矛盾しないこと ③原告が本件事故以前に右肩の痛み等の症状を訴えて治療を受けていた事実はなく、本件事故の翌日に受診した際から右肩の痛みを訴えていたこと

次に、原告の右肩関節痛及び筋力低下の後遺障害の程度については、 ①原告の後遺症は、骨挫傷に起因して生じたものと理解できるものの、骨挫傷自体は時間の経過により治癒するものであること ②原告に残存する後遺症について他覚的所見はなく、他に原告の関節痛や筋力低下を他覚的に裏付ける所見があるとは認められないこと といった事情を考慮し、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」には至らず、14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当するに留まるとし、骨挫傷に基づく後遺障害として14級9号を認定しました。

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