交通事故の慰謝料を請求する方法と注意点
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故に遭い、怪我を負った場合や後遺障害が残った場合、また被害者が死亡してしまった場合は、加害者側に対して慰謝料を請求することができます。 では、慰謝料はどのように請求すればいいのでしょうか? この記事では、交通事故の慰謝料を請求する方法や注意点について解説していきます。
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目次
慰謝料請求の流れ
交通事故の発生から慰謝料を含む示談金を受け取るまでの流れは以下のとおりです。
- ① 事故発生
- ② 怪我の治療
- ③ 完治または症状固定
- ④ 後遺障害等級認定
- ⑤ 示談交渉開始
- ⑥ 示談成立
- ⑦ 慰謝料の受け取り
示談交渉は全ての損害が確定してから行われます。さらに、示談交渉は過失割合や慰謝料を含む損害項目の金額などについて揉めやすく、短期間で示談成立するものではありません。 そのため、慰謝料の受け取りまでに時間がかかってしまう場合もあります。
交通事故の慰謝料の請求方法
交通事故の慰謝料の請求方法には、以下の2つの方法があります。
- ① 示談交渉
- ② 被害者請求
これらはどのような違いがあり、どのように慰謝料を請求していくのでしょうか。次項からそれぞれについて解説していきます。
示談交渉
示談交渉とは、相手方保険会社との話し合いによる交渉のことで、慰謝料や損害賠償金の金額・過失割合について決めることです。 示談交渉の流れと話し合う内容について見ていきましょう。
示談交渉の流れ
- ① 怪我の完治後または後遺障害等級認定終了後、相手方任意保険会社から示談金額などの提示を受ける
- ② 提示内容について交渉し、合意に至ると合意内容をまとめた示談書が送られてくる
- ③ 示談書に署名・捺印して、相手方任意保険会社に返送する
- ④ 相手方任意保険会社内で事務手続きが終わると、慰謝料を含む示談金が入金される
示談交渉で話し合う内容
示談交渉では主に、以下について話し合います。
- 1. 慰謝料・損害賠償金の金額
- 2. 過失割合
相手方保険会社は交渉のプロであり、交通事故に慣れていない被害者の方に分からないような専門用語を使ったり、強引に示談を成立させてくる可能性もあります。 また、被害者の方が慰謝料の金額や過失割合に納得いかずに交渉する場合も、根拠もなく反論するのでは、相手方保険会社は納得してくれないでしょう。 ご自身で示談交渉してくことは非常に難しく、また精神的負担がかかります。そのため、示談内容に納得できない場合は弁護士に相談しましょう。
被害者請求
交通事故の慰謝料の請求方法として、「被害者請求」という方法があります。 被害者請求とは、加害者側の自賠責保険に被害者が直接に慰謝料を請求する方法です。この方法によって、示談より前に慰謝料や損害賠償の一部を自賠責保険から受け取ることができます。 被害者請求については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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慰謝料請求を行う前に確認するべきこと
慰謝料の請求を行う前には、確認するべきことがあります。
- ① 慰謝料の請求先はどこなのか
- ② 請求できる慰謝料と損害賠償項目の内訳
- ③ 後遺症が残った場合
これらのうち、どのような点を確認すべきなのか次項から詳しく見ていきましょう。
慰謝料の請求先はどこなのか
慰謝料の請求先は、加害者が「任意保険に加入済み」の場合と「任意保険に未加入」の場合で次のように異なります。
●加害者が任意保険に加入済み⇒相手方任意保険会社に慰謝料請求 相手方任意保険会社に慰謝料請求することで、相手方任意保険会社からの支払い分も、相手方自賠責保険からの支払い分も、すべてまとめて支払ってもらうことができます。
●加害者が任意保険に未加入⇒相手方自賠責保険会社と加害者本人に慰謝料請求 本来、相手方任意保険会社から支払われるはずの金額は加害者本人に請求します。また、相手方自賠責保険からの支払い分も、被害者が直接請求する必要があります。 加害者が任意保険に未加入の場合は、示談交渉の相手も加害者本人となります。示談交渉に応じなかったり、適切な慰謝料を支払おうとしない場合は、弁護士に相談しましょう。
請求できる慰謝料と損害賠償の内訳
交通事故で請求できる損害賠償項目には、下表のようなものがあります。
慰謝料の種類 | 入通院慰謝料 | 交通事故の怪我の治療・入通院によって被った精神的苦痛に対する補償 |
---|---|---|
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償 | |
死亡慰謝料 | 事故によって被害者が死亡に至ったことによる精神的苦痛に対する補償 | |
損害賠償 | 治療費 | 怪我の治療のために医療機関に支払った診療費・入院費などの費用 |
付添看護費 | 被害者の治療や入通院で家族の付添が必要になった場合の費用 | |
入院雑費 | 入院中に発生した日用雑貨の購入費や通信費といった雑費 | |
通院交通費 | 医療機関に通院するためにかかった費用 | |
文書料 | 交通事故証明書取得費用、後遺障害診断書料等が認められる | |
診断書発行費 | 交通事故の怪我の診断書を作成してもらう際の費用 | |
休業損害 | 怪我の治療のために仕事を休んだことにより、収入が減ったことに対する補償 | |
逸失利益 | 交通事故の影響により、将来得られるはずだった収入が得られなくなったことに対する補償 |
交通事故の損害賠償=慰謝料と思われる方も多くいらっしゃいますが、交通事故ではさまざまな損害賠償項目があり、その中に慰謝料があります。 怪我の状態や事故の状況によっては、介護費や装具・器具購入費など、上記の表以外にも請求できる項目があります。ご自身の状況から請求できる損害賠償項目を知りたい方は一度弁護士にご相談されてみてください。 交通事故の慰謝料については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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後遺症が残った場合
慰謝料を請求する前に「後遺症」が残っていないか確認しましょう。通院していく中で、症状が残っている場合は、医師に「症状固定ですね」と診断されるまで通院を続けましょう。
●症状固定とは
治療を続けても、残存した症状が良くも悪くもならない状態のこと
症状固定後は後遺障害等級認定を申請することができます。1~14級の後遺障害等級に認定されることで、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を新たに請求することができ、示談金が増額します。 示談交渉は全ての損害が確定してから行うようにしましょう。示談が成立してしまうと、後遺症が発覚しても後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できない可能性もあります。 症状固定については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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交通事故の慰謝料請求時の注意点
交通事故の慰謝料請求時には、注意しておかなければならないこともあります。
- ① 慰謝料請求には時効がある
- ② 物損事故では慰謝料はもらえない
- ③ 慰謝料には3つの基準がある
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
慰謝料請求には時効がある
慰謝料の請求には、以下のような時効があります。事故の状況や怪我の状態によって時効の期間は変わってきますので、注意しましょう。
後遺症なし、人身事故 | 事故日の翌日から5年 |
---|---|
後遺症あり、人身事故 | 症状固定日の翌日から5年 |
死亡事故 | 死亡日の翌日から5年 |
交通事故の加害者への損害賠償請求には時効があり、「損害または加害者を知った日」の翌日から時効期間が始まります。一般的な交通事故の場合、事故の発生直後から加害者を知ることになりますので、事故発生日の翌日から時効期間が始まることになります。 一方、後遺障害による損害を請求する場合には、後遺症が残存することが発覚しなければ「損害を知った」ことにはならないため、後遺障害が残った場合は「症状固定日」の翌日が起算日となります。 損害賠償請求の時効については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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物損事故では慰謝料はもらえない
交通事故の慰謝料は、人身事故の場合のみ請求することができます。これは、慰謝料が「被害者の身体の損傷に伴って生じた肉体的・精神的苦痛に対する補償」であるからです。 そのため、物損事故の場合は被害者の身体の損傷が発生していないため、慰謝料を請求することはできません。 しかし、物損事故だからといって損害賠償が何もないわけではありません。物損事故の場合、以下の損害賠償項目を請求することができます。
- 修理費または買替差額
- 登録手続き関係費
- 評価損
- 代車使用料
- 代車損 など
物損事故の損害賠償については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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慰謝料には3つの基準がある
交通事故の慰謝料を算出するには、下表のように3つの基準があり、どの基準を採用するかによって慰謝料の金額は大きく変わります。
自賠責基準 | 基本的な対人賠償の確保を目的とする基準 |
---|---|
任意保険基準 | ・示談交渉で加害者側任意保険会社が提示してくる金額の基準 ・計算方法は任意保険会社ごとに決められていて、非公開 |
弁護士基準 | ・過去の裁判例をもとに作成された慰謝料を算定する際に用いる基準 ・裁判所や弁護士が使用する基準 |
3つの基準による慰謝料額の大小関係は、自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準となり、弁護士基準が最も高額になります。 しかし、被害者が弁護士基準を用いて増額交渉を行っても、相手方保険会社が首を縦に振ることはほとんど無いでしょう。弁護士基準で慰謝料を増額させたい場合は弁護士に依頼することがおすすめです。 なぜ慰謝料の金額に差が生まれるのかというと、3つの基準によって慰謝料の計算方法が変わるからです。 以下のリンクでは、慰謝料の相場と計算方法について詳しく解説していますので、ご参考ください。
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交通事故慰謝料の請求方法について弁護士にご相談ください
ここまで、交通事故の慰謝料請求方法について解説してきましたが、示談交渉の流れや、相手方の任意保険の加入状況によって慰謝料の請求先が変わるなど、交通事故に詳しくなければ分からないことも多くあり、困惑された方もいらっしゃるかもしれません。 適切な慰謝料を請求されたい方は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。 私たちには、交通事故に精通した弁護士が多数在籍しております。 被害者の怪我の状態や事故の状況から適切な慰謝料の金額やその他損害賠償項目を算出し、漏れなく相手方に請求し、交渉していきます。弁護士に依頼することで、慰謝料は「弁護士基準」で算出するため、相手方保険会社が提示する金額より高額になる可能性が高まります。 また、弁護士は代理人として、保険会社とのやり取りを任せることができ、被害者の方の負担を減らすことができるでしょう。 交通事故の慰謝料請求について、少しでも不安が残る方は私たちにお気軽にご相談ください。