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破裂骨折してしまった時の後遺障害

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

破裂骨折という傷病名を聞いたことはあるでしょうか?破裂骨折とは、交通事故等により生じることのある骨折のひとつで、特に重度の骨折を指します。 破裂骨折してしまうと、後遺症が残るケースも多く、残る後遺症の内容も様々です。 本記事では、破裂骨折により残る可能性のある後遺症について、後遺障害等級認定のポイントとともに説明します。

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破裂骨折とは

破裂骨折とは、背骨を構成する椎骨の主要部である椎体の前壁と、後壁の両方が骨折し、骨片が後方(脊柱管方向)に突出して脊髄等を圧迫するようになった状態をいいます。 交通事故では、自転車やバイクを運転していたところ自動車等と接触して転倒し、臀部や胸部を地面に強打したり、自動車乗車中に追突され、シートベルト等で身体が強く抑えつけられたりすることによって脱臼を伴う骨折をした場合等に、破裂骨折になることがあります。 破裂骨折は、骨折の中でも重度の骨折なので、受傷が疑われる場合にはすぐに検査を受け、適切な治療を受けましょう。

破裂骨折の検査と治療

破裂骨折の検査としては、X線検査やCT検査が行われます。破裂骨折をしている場合には、レントゲン写真上で、骨が潰れ脊椎が楔状に変形していることが確認できます。X線検査やCT検査でも異常が見当たらない場合には、MRI検査が行われ、輝度の変化で骨折の有無を確認します。MRI検査では、骨折が古いものなのか新しいものなのかの判断ができるため有用です。 破裂骨折の治療は、第一に保存治療が行われます。2週間程度ベッド上で安静にし、痛みが治まったところで2~4週間程度コルセットを装着し、骨折した椎体が骨癒合するのを待ちます。 多くの方は保存治療で症状が改善しますが、期間を置いても症状が改善しない場合には、脊椎インストゥルメンテーションといったような観血的療法(手術)が選択されます。 脊椎インストゥルメンテーションとは、金属のネジや棒を使って脊椎を固定したり矯正したりする手術です。また、骨片が40~50%以上脊柱管を占拠して麻痺等の神経症状が生じている場合には、同時に神経除圧術を行い、症状の改善に努めます。

破裂骨折の後遺障害等級と慰謝料

破裂骨折は、非常に重要な神経である中枢神経が通っている脊椎で起こり、脊髄等を圧迫します。そのため、脊髄にも損傷が及び、神経症状をはじめとする様々な後遺症が残るおそれがあります。 また、破裂骨折は椎体が潰れてしまうため、そのまま放置すると、脊椎が曲がったまま固まってしまい、脊椎の変形という後遺症が残ることがあります。 こうした後遺症の存在と交通事故との因果関係を医学的に証明または説明できれば、後遺障害として認定される可能性があります。

変形障害

破裂骨折では、脊椎が潰れてしまうため、緩やかなS字を描く脊椎のカーブが歪んでしまいます。そして、治療を受けても歪みが完全には治らないまま骨癒合してしまうと、脊椎の変形という後遺症が残ります。脊椎の歪みが一定以上の場合には、変形障害として、後遺障害が認められることになります。

請求できる後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準※1 弁護士基準
6級5号 512万円 1180万円
8級相当 331万円 830万円
11級7号 136万円 420万円

※1:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。

運動障害

破裂骨折が起こると、骨折を起こした部位が強直したり、治療のために脊椎を固定することにより可動域が制限されたり、また、逆に異常な可動性が生じたりすることがあります。このような可動域の異常が一定以上の場合には、運動障害として、後遺障害が認められます。

請求できる後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準※2 弁護士基準
6級5号 512万円 1180万円
8級2号 331万円 830万円

※2:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

麻痺

破裂骨折では、骨片が脊髄を圧迫するとともに、脊髄を損傷することがあります。脊髄は、脳からの命令を各部に伝え、また、各部からの情報を脳に伝える重要な神経です。したがって、脊髄が圧迫あるいは損傷すると、脳からの命令が各部にうまく伝わらなくなるため、損傷個所に応じて麻痺が起こります。 麻痺の程度に応じて、後遺障害等級が認定されることになります。

請求できる後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準※3 弁護士基準
別表第1 1級1号 1650万円 2800万円
別表第1 2級1号 1203万円 2370万円
3級3号 861万円 1990万円
5級2号 618万円 1400万円
7級4号 419万円 1000万円
9級10号 249万円 690万円
12級13号 94万円 290万円

※3:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

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弁護士にご相談ください

破裂骨折は、X線写真やCT画像、MRI画像等で骨折部位を確認しやすいため、破裂骨折の診断が出ている場合に、後遺障害等級の認定自体に問題が生じることはあまりないでしょう。 しかし、どの程度の障害と評価されるかについては、問題となり得ます。例えば、変形障害ならば6級・8級・11級、運動障害ならば6級・8級と、同じ系列の後遺障害でもいくつかの等級に分かれています。このうちどの等級が最も適切なのか、被害者ご自身で判断されるのは難しいでしょう。 また、後遺障害等級認定を申請したところ、必要な書類が足りないために「非該当」とされたり、適切な等級が認定されなかったりすることがあり得ます。 適切な後遺障害等級認定を受けるためには、法的知識とともに医学的知識も必要になるため、後遺障害等級申請の経験があり、医療に強い弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。 後遺障害等級によって決まる後遺障害慰謝料額は、損害賠償金の中でもかなりの比重を占めます。適正な賠償を受けるために、適切な後遺障害等級認定を得ることを目指しましょう。 適切な後遺障害の認定を受け、適正な賠償を受けるためにも、後遺障害等級認定申請の経験があり、医療問題に強い弁護士が集まるALGにご相談・ご依頼ください。

破裂骨折の裁判例

破裂骨折による後遺障害が認められた実際の裁判例をご紹介します。

【大阪地方裁判所 平成29年3月29日判決】

<事案の概要>

原告の運転する普通貨物自動車に、被告の運転する大型貨物自動車が追突した事故において、第4腰椎破裂骨折等の傷害を負った原告が、被告に対して損害賠償を請求した事案です。 原告は、脊柱の変形障害について、自賠責保険により後遺障害等級11級7号「脊柱に変形を残すもの」の認定を受けたものの、被告から原告に本件事故後の減収はないとして後遺障害逸失利益を否定したため、争点となりました。

<裁判所の判断>

裁判所は、①自賠責保険により11級7号に該当する脊柱変形の後遺障害を生じたこと、②第4腰椎破裂骨折に対し、保存治療が選択され、その後、骨癒合に問題が生じなかったと推認できること、③原告には腰痛が生じており、運送業務に従事することによって悪化しているもの、諸々の事情から原告自身が業務を稼働していたと推認できること、④原告自身の役員報酬は本件事故後に増加していること等を総合して検討した結果、原告は、本件事故による後遺障害によって、症状固定時から67歳までの19年間にわたり、労働能力を14%喪失したとみるのが相当であると判断し、原告の後遺障害逸失利益を認めました。破裂骨折による後遺障害逸失利益を否定した被告に対し、後遺障害逸失利益の存在を認め、支払いを命じた裁判例です。

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