交通事故による頚椎脱臼骨折と後遺障害
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
首に位置する頚椎は、重たい頭を支える役割を担っているため、強い衝撃を受けるとその反動で損傷を受けやすい部位といえます。交通事故の怪我でよく耳にするのは、通称むちうちといわれる頚椎捻挫ですが、事故の衝撃が大きい場合等は頚椎捻挫に留まらず、脱臼や骨折に至ることがあります。 ここでは、交通事故による頚椎脱臼骨折に着目し、詳しく解説していきます。
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目次
頚椎脱臼骨折とは?
頚椎脱臼骨折とは、背骨のうち頚部にあたる7つの椎体において発生した、脱臼と骨折が合併した状態のことをいいます。事故等により頭部に大きな衝撃・外力を受けたことで発症し、折れた骨片やずれた関節によって、運動機能や感覚機能を司る頚髄(頚部の脊髄)の損傷を伴うおそれがあります。 また、脱臼は、骨折の場合よりも血管や靱帯、神経の損傷を伴いやすく、特に後方靱帯を断裂してしまうことが多いです。自然整復する場合もありますが、多くは手術による整復が必要であり、損傷の程度によっては不全麻痺や完全麻痺が生じ、後遺症として残ってしまうケースもあります。
頚椎脱臼骨折になりやすい場所
頚椎脱臼骨折は、7つある頚部の椎体のうち、特に第5-6、第6-7頚椎間で発症する傾向にあります。前方または後方にずれることで、ずれた関節周りに骨折を伴うことが多いです。また、第2頚椎(軸椎)の歯突起骨折により、第1頚椎(環椎)の脱臼を合併するケースもあります。いずれにしても程度が大きい場合は、発生・残存する麻痺の症状も重篤なものとなります。
頚椎脱臼骨折につながる事故原因
頚椎脱臼骨折は、頭部や頚部に直接大きな衝撃・外力を受けたときに発症することが多いです。例えば、車が大破してしまうような激しい衝突事故や、歩行中または自転車乗車中のスピード違反車との衝突事故で、その衝撃や反動により頚部を過屈曲・過回旋する等して発症します。他にも、ラグビーなどの頭頚部に外力を受けることの多いスポーツ、体操、マリンスポーツ等でも受傷することが多いです。
症状
事故後、頭頚部に立ち座りも困難なほどの激しい痛みを感じた場合、頚椎脱臼骨折を発症している可能性があります。頚椎脱臼骨折は、頚髄を損傷しているケースもあるため、以下の症状に心当たりがある方は直ちに病院に行きましょう。
<症状>
・頭部・頚部(患部周辺)の痛み
・頭部・頚部の異常姿勢
・頚部の可動域制限
<頚髄損傷を伴う症状>
・運動麻痺
・感覚障害
・手足の痛み・痺れ
・排尿・排便障害
また、骨折・脱臼特有の合併症にも注意が必要です。例えば、骨折なら血管損傷や循環障害、脱臼なら軟部損傷等を併発する懸念があるため、適切な検査・治療を徹底することが重要です。
検査方法
頚椎脱臼骨折は、破裂骨折との判別がつきにくいうえ、脱臼に至る手前の亜脱臼である場合は見逃されてしまうことがあります。そのため、受診先に脊椎や脊髄に特化した専門医が在籍しているかどうかを確認しましょう。 具体的な検査方法としては、2~4方向からの単純X線、CT撮影が挙げられます。頚髄損傷の疑いがある場合はMRI検査が追加されたり、症状の程度によっては3DCTや超音波検査が行われたりします。また、脱臼は癖になる特徴があることから、既往歴の確認も重要です。
治療方法
頚椎脱臼骨折の治療は、原則、観血的治療、つまり手術が行われます。画像検査等で脱臼・骨折箇所を確認したら、患部の整復を行い、固定し、筋力や機能回復のための長期的なリハビリを行うまでが一連の流れとなります。脱臼・骨折の状態が軽度で、頚髄損傷のおそれがない場合は、手術を行わず保存的治療を施されることもあります。 代表的な保存的治療には、「カラー装着」や「頭蓋牽引」があります。頭蓋牽引には、頭蓋骨に直接ボルトを刺して重りを牽引することで固定を図る直達法と、専用具で顎や後頚部等を牽引することで固定を図る介達法があります。 いずれにしても治療の最終段階は、筋力・機能回復を図ることです。頚髄損傷の有無、症状の程度、合併症等によって、適宜、適切なリハビリを受けるようにしましょう。
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頚椎脱臼骨折を受傷した際、弁護士法人ALGができること
高度な医学論争に対応
特に後遺症が残った場合、事故と後遺症との因果関係や、受傷した頚椎脱臼骨折と後遺症との因果関係が問題になることが多く、医学的知識がなければ対応が困難です。交渉相手となる保険会社は顧問医を有しているため、医学的知識で劣ってしまうと適切な対応ができません。 その点、我が国で初めて専門事業部制を取り入れた弁護士法人ALGは、医学博士も在籍する医療過誤事業部を有し、交通事故事業部との連携を図りながら事案に取り組むことが可能です。
治療や検査、リハビリについてのアドバイス
交通事故で頚椎脱臼骨折を負った場合、完治することが理想ですが、後遺症が残ってしまう可能性もあります。主治医は、治療方針は決めてくれますが、治療後の後遺障害等級認定のことまでは考えてくれません。そのため、後遺障害等級認定の申請時になって必要な検査が行われていないことが判明し、資料が足りず、適切な等級認定が得られない場合があります。 この点、交通事故事案を多数取り扱う弁護士は、その豊富な経験から、後遺障害等級認定を見据えた的確なアドバイスをすることが可能です。
後遺障害等級認定の申請・異議申立て
後遺障害等級認定の申請をするうえで、保険会社や医師に任せきりでは適切な後遺障害等級認定が得られない場合があります。 実際に、弁護士が骨折箇所のX線・CT・MRI等の画像を見て主治医と協議する際、主治医が気にしていなかった点を指摘できることもあります。 後遺障害等級認定の申請や異議申立てを適切に行うには、主治医と協議し、より良い診断書を書いてもらうことが重要です。そのためには、医療問題に強い弁護士に依頼するのが良いでしょう。
示談交渉
頚椎脱臼骨折によって重い後遺症が残った場合、裁判になる可能性が高いため、保険会社との示談交渉の際、裁判をすることも辞さない構えをみせる必要があります。 裁判では医学論争になることもあるため、医療問題に精通していない弁護士では、示談交渉の場で「裁判をしましょう」と迫力のある主張をすることは困難です。 したがって、示談交渉においても後遺障害等級認定の申請や異議申立てを行う場合と同様に、医療問題に強い弁護士に依頼すべきです。
適切な後遺障害等級の認定を受けるために弁護士に依頼しましょう
「交通事故の被害に遭ったうえに、損までしたくない」という被害者の方の思いは、当然に生じるものといえます。加えて、受傷した怪我が治ることなく後遺症が残ってしまうことは、筆舌に尽くしがたい苦しみでしょう。 後遺症が残ってしまった場合は、ぜひ、後遺障害等級の認定を受けてください。適切に認められた後遺障害等級は、適正な慰謝料を受け取る可能性を確実に高めてくれるからです。そして、適切な後遺障害等級の認定を受けるために、できるだけ早く弁護士に依頼することを検討しましょう。 法律の専門家であり、特に交通事故や医療分野に特化している弁護士は、頚椎脱臼骨折による後遺症が残った場合の示談交渉においても適切な主張・立証を行うことができます。頼れる存在は、大きな安心を提供してくれます。ぜひ、頼れる安心材料として弁護士をご活用ください。
残存する可能性のある後遺障害について
頚髄損傷のおそれもある頚椎脱臼骨折は、脊柱の「変形障害」「運動障害」の他に「神経症状(機能障害)」が後遺障害として認められる可能性があります。 脊柱のうち頚部の変形障害・運動障害は、「前屈60度」「後屈50度」「左右回旋60度」「左右側屈50度」の参考可動域と比較して障害の程度が認定されることになります。
頚椎脱臼骨折の後遺障害等級
頚椎脱臼骨折で認定される後遺障害等級のうち変形障害や運動障害に関するものは、以下のとおりです。症状の程度によって、後遺障害診断書や医師による証明書、検査画像等から、自賠責損害調査事務所が精査し、損害保険料率算出機構が認定します。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの |
6級準用 | 頚部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を要するもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
8級準用 | 頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を要するもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
「準用」とは、自賠責の後遺障害等級表にない部位や障害であっても、残存する後遺症が等級に相当すると認められる場合に認定されます。 硬性補装具とはコルセット等のことを指し、脱臼骨折により頚椎の不安定性が完治しない場合に使用します。
頚椎脱臼骨折の治療に専念するために経験豊富な弁護士に相談しましょう
交通事故による頚椎脱臼骨折は、頚髄損傷のおそれもあり、適切な検査・治療・リハビリを受けることが非常に重要な外傷です。事故態様として、被害者側に過失がない追突事故等で受傷することも多いため、ご自身の任意保険会社の示談代行サービスを利用できず、示談交渉が煩雑となるケースもあります。 何より、事故前の生活を取り戻すためには治療やリハビリに専念できる環境が必要です。ご家族や職場、学校、近隣の方々等の理解・協力はもちろん、示談交渉に関わるすべてを任せられる弁護士の存在は、治療に専念するために非常に有用です。 頚椎脱臼骨折を受傷し、不安の渦中にいらっしゃる方は、すぐに弁護士法人ALGにお電話ください。ご状況をお話ししやすい専門の受付職員がお伺いし、交通事故事案や医療過誤事件の経験が豊富な弁護士をご案内いたします。
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弁護士費用特約を使う場合
本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
弁護士報酬:成功報酬制
※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。