全身打撲は後遺障害になるのか?
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故に遭い全身を強く打ち、全身打撲と診断されたら、どのような賠償を受けられるのでしょうか。
全身打撲と診断されるような事故に遭ってしまった場合、打ちどころにより、骨折や脳挫傷など、重篤な症状を伴っているケースも多くあります。
このページでは、医師に全身打撲と診断された方のために、治療方法、後遺症、慰謝料などについて解説します。
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交通事故に遭いお困りの方へ
目次
交通事故で全身打撲したときにするべきこと
打撲(打ち身)とは、体が強い衝撃を受けることによって、皮下組織や軟部組織(筋肉・靭帯など骨以外の組織)の一部を損傷してしまうことをいいます。
そして、それら打撲症状を全身にわたって負うことを、全身打撲といいます。打撲は出血するような傷口を伴わないために軽傷と思われがちですが、骨折を伴っていたり、神経系の合併症につながったりなど、重症であれば後遺症が残るおそれもあります。
そのため、交通事故で特に全身打撲を負ったときは、何よりも病院での適切な検査や治療を受けることが重要です。
きちんと治療を続けることで、万が一完治せずに後遺症が残ってしまった場合でも、後遺障害等級が認定され補償を受けられる可能性が高くなります。
打撲の治療方法
打撲の初期段階(負傷後24~72時間程度)では、基本的に、内出血を抑えるためのアイシングを行います。
アイシングでは、氷のうなどを患部に密着させ、熱を奪うようにします。初期段階は内出血が続くおそれが高いため、極端に患部を温めてしまうと内出血を促進し、症状が重くなる場合があるため注意が必要です。
そして、患部を心臓より高い位置に上げることで、血流の滞りによるうっ血を防ぎ、安静にします。これをRICE療法といいます。
内出血が治まり腫れが引き始めたら、患部周辺を温かいタオル(36~37度前後)で温める温熱療法を行うことにより、自然治癒力を活性化させます。
全身打撲の後遺障害等級と慰謝料
全身打撲を負った場合、特に強く打撲した箇所によってさまざまな症状を引き起こすことがあります。
例えば、脳や内臓の損傷以外にも、コンパートメント症候群(筋区画の内圧が上昇し、筋腱組織の壊死や神経麻痺が生じる疾患)や、外傷性骨化性筋炎(大腿骨や上腕骨付近に骨の塊のようなものができ、痛みや筋力低下が生じる疾患)等が発生するおそれがあります。
全身打撲以外には傷病を伴わないものの、痛みやしびれが残った場合には、「神経症状」による後遺障害が認定される可能性があります。
神経症状
全身打撲によってひどい内出血が起こると、周りの神経や血管が圧迫されて血流が悪くなり、手足のしびれや激しい痛みといった神経症状が残ることがあります。
残った神経症状は後遺障害として、症状の程度により12級13号または14級9号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
請求できる慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円※ | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
全身打撲の後遺障害認定は非常に難しい
打撲の部位や程度にもよりますが、軽度の打撲であれば、長くとも通院開始日から3~6ヶ月で、保険会社から治療費の負担を打ち切られてしまいます。
このように、打撲は重篤な外傷とは認められにくいのが現状です。
器質的損傷が明らかでないことも多いため、後遺障害として認定されづらいといえます。
全身打撲が後遺障害として認定されるには、具体的な症状が生じていることが要件となります。
適正な賠償を受けるためにもご相談ください
全身打撲は、特に強く打撲した箇所によって症状が異なります。
重篤な後遺症を引き起こすケースもあれば、治療費が早期に打ち切られてしまうような軽度の症状しか引き起こさないケースもあります。
初期の段階から適切な治療を受け、すべての症状を医師に伝え続ける等のポイントはありますが、被害者の方ご自身だけで後遺障害の認定を受けるのは難しいといわざるを得ません。
交通事故だけでなく、医療問題に強い弁護士に相談・依頼すれば、後遺障害等級の認定に向けて、治療の受け方から後遺障害診断書の書き方までアドバイスを受けられ、適切な等級に認定される可能性が高くなります。
適正な賠償を受けるためにも、後遺障害等級認定申請の経験が豊富で、医療問題にも強い弁護士が集まる弁護士法人ALGにぜひご相談・ご依頼ください。
全身打撲の裁判例
【東京地方裁判所 平成25年12月18日判決】
<事案の概要>
横断歩道上を歩行中の原告に、被告の運転する普通乗用自動車が衝突し、全身打撲等の傷害を負った原告が、被告に対して損害賠償を請求した事案です。 後遺障害の有無や内容について争いとなりました。
<裁判所の判断>
裁判所は、事故態様や原告の症状、治療の経過などを考慮し、原告が本件事故により外傷性頚部症候群および外傷性腰部神経根障害を発症したと判断しました。
そして、被告車から原告に対する衝撃は決して小さいものではなかったと考えられるうえ、事故後、原告には頚部痛、腰部痛のほか、上下肢のしびれ及び筋力低下が生じていること、また、頚部の運動痛と腰部痛があり、右下肢の筋力低下及び右上下肢の近く鈍麻があったことなどを認めました。
以上の認定した事実を踏まえて、裁判所は、原告の頚部及び腰部の神経症状について、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を遺すもの」に該当すると認定しました。
全身打撲による神経症状の後遺障害が認められた裁判例となります。
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