後遺障害が認定されるまでの期間は?認定期間が長引く場合の対処法
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故で負った怪我の中には、完治せず後遺症が残ってしまう場合があります。このように、交通事故で後遺症が残ったら後遺障害等級認定を申請することができます。 しかし、後遺障害等級が認定されるまでは、一定の期間を要します。 後遺障害等級の認定期間は早くて30日、なかには1年以上かかるケースもあります。 この記事では、認定期間の目安や時間がかかる原因、長引く場合の対処法などを解説していきます。
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目次
後遺障害が認定されるまでの期間は?
後遺障害等級が認定される期間は、早くて30日以内、2ヶ月以内が9割となっています。しかし、後遺症の内容や程度によって認定に要する時間は異なるため、一概に「この期間までに認定されるか決まります」といった期間を言い切ることはできません。 以下の表では、2021年度の後遺障害等級認定を申請してから認定されるまでの期間の統計です。
認定までの期間 | 申請件数に占める割合 |
---|---|
30日以内 | 73.8% |
31~60日 | 13.7% |
61~90日 | 6.7% |
91日超 | 5.8% |
この表から分かるように、約85%のケースで後遺障害等級の認定期間は60日以内となっています。 しかしこの統計は、あくまでも平均的な期間に過ぎません。後遺症の種類によっては、審査が長引くこともあることに注意しましょう。
後遺障害等級認定を申請する流れ
そもそも、後遺障害等級認定とは、一体どのようなものなのでしょうか。
後遺障害等級認定とは?
交通事故の怪我が完治せず後遺症として残った場合に、その症状が「後遺障害」として1~14級の等級に認定されることをいいます。
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。 簡単にいうと、事前認定は、相手方保険会社に申請手続きを任せる方法で、被害者請求は被害者自身で申請手続きを行う方法です。 以下の表では、それぞれの概要についてまとめています。
事前認定 | 事前認定では、細かい申請手続きは相手方保険会社が行います。 被害者が行うことは、医師に後遺障害診断書を記載してもらい、相手方保険会社に渡すことのみです。 一見とても簡単な方法に見えますが、認定されるための積極的な活動が行えず、認定のための資料不足などから、後遺障害等級が認められないことがあります。 |
---|---|
被害者請求 | 被害者請求では、被害者が必要な書類を作成・準備して自賠責保険に提出します。 ご自身で全ての書類をそろえなければならないため、手間はかかりますが、必要な資料を漏れなく提出することができるため、手続きに透明性があり、事前認定より認定率が高まることを期待できます。 |
被害者請求はご自身で資料を作成・準備するため事前認定より時間がかかってしまうことがデメリットですが、むちうちなど等級認定されにくいものは追加資料を添付できるため、被害者請求をおすすめしています。 ご自身での申請が難しいと感じる場合は、弁護士に依頼する方法もあります。弁護士であれば必要な資料の作成や検査のアドバイス、後遺障害診断書に不備はないかの確認をしてもらうことが可能です。 後遺障害等級認定の申請方法については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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後遺障害等級認定に時間がかかる原因とは?
後遺障害等級認定の審査には、一定の時間がかかることを解説してきましたが、認定結果に遅れが生じる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。 考えられる原因は、以下のとおりです。
- ① 保険会社の手続きが進んでいない
- ② 損害保険料率算出機構の調査が長引いている
- ③ 医師の対応が遅れている
- ④ 提出書類に不備・不足がある
以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。
保険会社の手続きが進んでいない
認定が遅くなる原因として、保険会社の手続きが進んでいないことが考えられます。 後遺障害等級認定の事前認定では、相手方保険会社が被害者から預かった書類を審査機関である自賠責損害調査事務所に提出します。 しかし、保険会社の担当者はさまざまな業務を担当しているため、優先順位によっては、審査機関への書類提出が後回しになってしまうことがあります。
損害保険料率算出機構の調査が長引いている
後遺障害等級は損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所によって認定されます。 この調査事務所では、怪我の内容・程度によって1~14級のどの等級に当てはまるのか、または非該当であるのか、きちんと調査を行ったうえで結果を出しています。 交通事故の怪我は、単に一部分の怪我だけでは済まない場合も多く見られます。特に後遺症が残る怪我は複数の箇所で後遺症が残っているケースも多く、そうなると、単純に等級を当てはめるのではなく、「併合」という認定の仕方をします。この併合の認定の仕方もかなり難しいとされています。 損害保険料率算出機構は、後遺障害等級認定に関して、公平で中立な立場で実施していることを表明しています。このためケースによっては、当事者や警察への事故状況照会、医療照会、事故現場の調査が必要となることもあり、認定まで長引いてしまう可能性があります。 後遺障害の併合については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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医師の対応が遅れている
後遺障害診断書の内容だけでは、審査が難しい場合、損害保険料率算出機構は医師に症状や治療状況の確認をする「医療照会」を行います。
医療照会とは?
後遺症の症状や所見について、審査機関が医師に書面で問い合わせをすること。
とくに高次脳機能障害や脊髄に関する後遺症の場合は基本的に医療照会が行われます。また、提出書類だけでは等級を判断しかねる場合や、異議申立ての再審査でも行われることがあります。 医療照会を行ったが、医師が多忙のあまり返答が遅れていると、その間、審査は進みません。 よって、医師からの返答待ちになり、後遺障害等級の認定が遅れている可能性もあります。
提出書類に不備・不足がある
提出した書類に不備や不足があると、再提出となり時間がかかってしまうことがあります。 後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出書面で行われます。その中で最も重視される書類が「後遺障害診断書」です。 後遺障害診断書は医師に依頼し、作成してもらうものですが、すべての医師が後遺障害診断書の記載に慣れているわけではありません。なかには、今まで記載したことがない医師もいるでしょう。 そのため、内容が不十分であったり、不足があったりするケースもあります。 後遺障害等級が認定されるまでの期間が短くなるためにも、書類をそろえたら弁護士に不備・不足がないか確認してもらうと安心でしょう。 もちろん、後遺障害等級認定の申請を考えている段階でも、弁護士であれば必要な書類や注意点などのアドバイスをもらうことが可能です。 後遺障害診断書については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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後遺障害等級認定の期間が長引く場合の対処法
後遺障害等級認定の期間が長引くと、示談交渉を開始できなかったり、示談金受け取りまでの時間がかかったりしてしまいます。 このようなリスクを回避する対処法はあるのでしょうか。 以下で対処法について見ていきましょう。
保険会社に連絡をする
事前認定の場合は、保険会社に書類を渡してから2ヶ月以上何ら連絡が来ないような場合は、保険会社の担当者に進捗を問い合わせてみましょう。 問い合わせをすることで、書類提出が遅れていた場合、早急に対応してもらえる可能性があります。 また、弁護士から相手方保険会社に連絡してもらうことも可能です。弁護士からの連絡によって、優先順位が高い案件だと思ってもらえることが期待できます。
事前認定から被害者請求に切り替える
事前認定で後遺障害等級認定を申請したものの、書類が保険会社内で止まっている場合は、被害者請求への切り替えも検討しましょう。 このまま保険会社が書類を準備し、審査機関に提出するのを待つよりも、被害者請求に切り替えて自分で書類を用意した方が、早く手続きが済む場合があります。 ただし、被害者請求に切り替えても必要書類が分からない、必要な検査をしていない、書類に不備・不足があるかチェックをしていない、といった状態では、申請するまでにさらに時間がかかることも考えられます。 被害者請求に切り替える場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、後遺症ごとに必要な検査、必要な資料や書類を熟知しているため、後遺障害等級認定までの期間が短くなることが期待できます。 被害者請求については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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弁護士に依頼する
後遺障害等級認定が長引く場合の対処法として、弁護士に依頼することも検討しましょう。 交通事故に詳しい弁護士であれば、後遺障害等級認定の申請や被害者請求に慣れているため、被害者請求の手続きを速やかに進めることができます。 また、被害者に残存した後遺症ごとに等級認定のために必要な資料を不足なく提出することができるため、認定まで長期化することを防げます。 後遺障害等級認定では、後遺障害診断書の内容がとても重要です。医師に記載してもらった後、弁護士に不備・不足が無いか確認してもらうことでより有効な書類となるでしょう。 また、なかなか認定されにくい後遺症でも必要な検査のアドバイスを受けることで、等級認定率が高まります。 弁護士であれば、その後の示談交渉まで任せることができるため、相手方保険会社の提示する示談金よりも高額になることが期待できます。
交通事故の損害賠償請求には時効があるため注意!
交通事故の損害賠償請求には、時効があります。つまり、被害者が加害者に損害賠償請求できる期間には、限りがあるということです。 後遺障害がある場合の時効は、下表のとおり「症状固定日の翌日から5年」となります。 症状固定とは、交通事故によって負った怪我が治療をしても良くも悪くもならない状態のことを指し、医師から症状固定を診断されると、後遺障害等級認定を申請できるようになります。 5年の時効と聞くと、長く余裕があると思われるかもしれませんが、この時効は後遺障害等級認定の審査結果を待っている間も進行していきます。 つまり、後遺障害の認定が遅くなればなるほど、示談交渉のために残された時間が短くなってしまうのです。 交通事故による損害賠償請求の時効は以下の表のとおりです。
事故の状況 | 時効 |
---|---|
物損事故 | 事故の翌日から3年 |
人身事故(後遺障害なし) | 事故の翌日から5年 |
人身事故(後遺障害あり) | 症状固定日の翌日から5年 |
死亡事故 | 死亡日の翌日から5年 |
加害者が特定できていない事故 | 事故日の翌日から20年 |
後遺障害等級認定の結果が遅い場合は、時効までの残り時間を確認し、適切な準備をしておく必要があります。 時効が迫っている場合の対処法については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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弁護士の交渉により14級9号が認定され、賠償金約185万円を獲得する早期解決に至った事例
依頼者の車両が信号機のない交差点に進入した際、交差道路を進行してきた相手方車両と出合い頭で衝突したという事故様態でした。 依頼者は一定期間の通院治療と事前認定を経て、後遺障害等級14級9号が認定されました。 その後相手方から約102万円の賠償案が提示されたものの、適切な内容であるか不安に感じられ、当事務所にご相談いただきました。 担当弁護士が相手方からの賠償案を検討したところ、弁護士基準に比べて低いといえる内容でした。 そこで、弁護士基準に照らして算出した賠償額を提示して相手方に増額を求めたところ、過失割合による減額があったものの、約1ヶ月の交渉で約83万円の増額となり、最終的に既払い分を除く185万円の賠償金を支払ってもらう内容で示談が成立しました。
後遺障害の認定期間に関するQ&A
後遺障害の認定から示談成立までの期間はどれぐらいかかりますか?
後遺障害等級が認定されると、等級に応じて後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。
また、後遺障害が認定されることで、これ以上損害が出ない状態となるため、示談交渉が開始されます。
後遺障害ありの人身事故の場合、示談成立までの目安は、後遺障害等級が認定されてから半年~1年程度となります。
後遺障害ありの人身事故における示談成立までの流れは以下のとおりです。
① 事故発生
② 入通院治療(半年以上)
③ 症状固定
④ 後遺障害等級認定の申請(2ヶ月程度)
⑤ 示談交渉(半年~1年程度)
⑥ 示談成立
ただし、この期間はあくまでも目安であるため、個別事情によって期間は異なります。もし、時効が完成しそうな場合は、弁護士に相談しましょう。
むちうちで後遺障害14級に認定される期間はどれぐらいですか?
交通事故で特に多い怪我が「むちうち」ですが、むちうちでも後遺症が残り、後遺障害等級が認定される可能性があります。 むちうちが後遺障害として認定される場合は、後遺障害等級14級9号または12級13号に認定される可能性が高いです。 後遺障害等級認定の申請から認定結果が出るまでは2ヶ月程度かかるでしょう。 しかし、むちうちは等級認定率があまり高くはありません。その理由として、例えば交通事故により、指を欠損してしまった場合は、「指の欠損」が客観的に明らかです。 一方、むちうちの症状は、外見からは判断できません。また、MRIやCTといった画像検査上も異常が認められないことも多いため、痛みやしびれなどの症状の残存を客観的に証明するのが難しいのです。 そのため、後遺障害等級の認定率が低くなってしまいます。 むちうちの種類と症状については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
交通事故によるむちうち|症状・治療の注意点・慰謝料について解説
後遺障害がなかなか認定されない場合、認定結果が出る前に示談交渉を始めてもいいですか?
一般的な方法ではないですが、認定結果が出る前に「後遺障害分以外の傷害部分」について、先に示談交渉をすることは可能です。 怪我による休業などで生活が圧迫している場合などには良い方法ですが、あくまでも相手方や相手方保険会社が了承してくれた場合に限ります。 また、先に後遺障害分以外の傷害部分について示談交渉する際に、後で後遺障害分がもらえるから、と安易に相手方保険会社の提示する金額で合意することは避けましょう。焦りから早期に示談してしまうと、受け取れる損害賠償金が少なくなってしまう可能性があります。 先に後遺障害分以外の傷害部分について示談交渉したい場合は、一度弁護士に相談されると良いでしょう。
後遺障害等級の認定期間でお困りなら、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください
後遺障害等級の申請から認定までは2ヶ月程度かかりますが、後遺症の種類や程度によって認定までの期間は異なっています。 申請してから結果が分かるまで、時間がかかっていると不安な気持ちになると思いますが、そのような場合は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。 私たちは交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。交通事故に詳しい弁護士だからこそ、後遺障害等級認定について熟知しており、弁護士が十分資料を集めたうえで申請することで、認定期間を短縮できる可能性があります。 また、弁護士に任せることで、後遺障害診断書の確認やご自身の後遺症に合った検査のアドバイス、必要な資料を作成することができるため、後遺障害等級に認定される確率が高まり、損害賠償金の増額につながります。 後遺障害等級認定まであまりにも時間がかかりすぎていると感じた場合は、一度私たちにご相談ください。