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休業損害証明書とは?書き方や書いてもらえない場合の対処法

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

交通事故の怪我で仕事を休んだり、遅刻・早退したりして減少してしまった収入は、「事故による損害=休業損害」として加害者側に補填してもらうことができます。 今回は、休業損害を請求するにあたって提出を求められることがある“休業損害証明書”について詳しく解説していきます。 休業損害証明書とはどのような書類なのか、書き方や書いてもらえないときの対処法について、本ページで理解を深めていきましょう。

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休業損害証明書とは

交通事故の怪我で仕事を休んだ場合に、“休業損害”を請求するにあたって必要になるのが“休業損害証明書”です。

●休業損害とは?
休業損害とは、交通事故の怪我で仕事を休んだ、あるいは遅刻・早退したことで減少してしまった収入のことです。

●休業損害証明書とは?
休業損害証明書とは、「交通事故の怪我によって仕事を休んだ事実」と「それによる収入の減少=損害」を証明するための書類です。
会社員やパート・アルバイトなどの勤務先から収入を得ている“給与所得者”が、休業損害を請求するために必要な書類です。

以下ページで、休業損害を請求できる人や計算方法などを詳しく解説しています。 あわせてご参考ください。

休業損害証明書のもらい方

休業損害証明書は、一般的に加害者側の保険会社から、被害者の方に書類が送られてきます。 書類を受け取ったら、勤務先に提出して作成を依頼しましょう。 なお、休業損害証明書1枚に記載できる休業状況は3ヶ月分です。 休業期間が3ヶ月以上の場合や、休業損害を毎月請求する場合など、2枚目・3枚目と追加の書類が必要なときは、送られてきた書類をコピーして利用することができます。 保険会社のウェブサイトから休業損害証明書がダウンロードできる場合もあるので、書類が追加で必要な場合のほか、書類を紛失してしまった場合にも、印刷して利用することが可能です。

個人事業主(自営業)の場合は不要

個人事業主(自営業)の場合、給与所得者にあたらないため、休業損害証明書の提出は必要ありません。 給与所得者の方は休業損害証明書によって、休業の事実や減収の事実を勤務先に証明してもらうことができる一方、個人事業主(自営業)の方は勤務先による証明ができません。 そのため、前年度の確定申告書などの書類から、ご自身で休業の事実や減収の事実を立証することになります。

●専業主婦(主夫)の場合は?
給与所得者にあたらない専業主婦(主夫)の場合も、休業損害証明書は必要ありません。休業損害証明書の代わりに住民票などから、家族のために家事労働に従事していることを立証することになります。

休業損害証明書は誰が書く?自分で書いてもいい?

休業損害証明書は勤務先が作成します。 労務部・人事部・総務部の担当者に依頼することが多いですが、小規模な会社で担当者が決まっていない場合は社長に書いてもらうこともあります。 派遣社員の方は、ご自身が登録している派遣会社の担当者に依頼しましょう。

●休業損害証明書を自分で書いてもいい?
休業損害証明書は勤務先が作成するものなので、ご自身で書いてしまうと信用性が失われ、示談交渉において不利に働くおそれがあります。
勤務先に作成を断られたり、作成を依頼しにくかったりしても、ご自身で書類を書くことはやめましょう。

休業損害証明書を書いてもらうときの注意点

休業損害証明書を勤務先に書いてもらうにあたって、次のことに注意しましょう。

●内容を確認する
休業損害証明書に記載内容の誤りや記入漏れがあると、適正な休業損害が受け取れなくなってしまうので、勤務先に作成してもらった後、必ずご自身で内容を確認しましょう。 勤務先が書き方を知らない場合も多いので、ご自身も書き方を知っておくことが大切です。

●正しく修正する
内容に修正すべき点があったら、担当者に訂正してもらいましょう。 その際、訂正箇所を二重線で抹消し、その上に作成担当者の訂正印を押してもらいます。

休業損害証明書の書き方

適正な休業損害を請求するためにも、休業損害証明書の書き方を知っておきましょう。 勤務先が休業損害証明書の書き方を知らない場合や、勤務先が作成した休業損害証明書に不備がないか確認する場合にお役立てください。

休業損害証明書の書き方

《休業損害証明書の記入項目》

  • ① 休業期間
  • ② 欠勤、有給、遅刻、早退の日数(回数)
  • ③ 休んだ日
  • ④ 休んだ期間の給与
  • ⑤ 事故前3ヶ月の支給された給与額
  • ⑥ 社会保険や労災保険からの給付の有無

《休業期間が3ヶ月以上の場合の書き方は?》

休業損害証明書1枚に、3ヶ月分の情報を書くことができます。 休業期間が3ヶ月以上で示談交渉時に休業損害をまとめて請求する場合、一般的には、休業損害証明書1枚に3ヶ月分ずつ分けて書きます。

(例)休業期間が2023年6月20日~2023年11月20日の5ヶ月間だった場合
分けて書く(1枚に3ヶ月分ずつ)

●1枚目の全ての項目に「2023年6月20日~2023年8月31日」の情報を書く。 ●2枚目の全ての項目に「2023年9月1日~2023年11月20日」の情報を書く。 ※全書類の項目⑤(事故前3ヶ月の給与額)は同じ内容になる

項目ごとの具体的な内容を、次項で詳しく解説していきます。

1.休業期間

1番目の項目には、休業期間を書きます。 休業期間には、遅刻や早退を含めて、交通事故による怪我で休んだ最初の日と最後の日を書きます。 この休業期間が誤っていると、休業損害の金額が減ってしまう可能性があるので注意しましょう。

《毎月あるいは3ヶ月ごとに休業損害を請求する場合》
毎月あるいは3ヶ月ごとに休業損害証明書を作成することになるので、対象期間の最初の日と最後の日を書きます。 例えば事故による最初の休業日が2023年6月20日で、毎月休業損害証明書を作成する場合(給与締切日は毎月末日)、休業期間は次のようになります。 ・1回目の請求:2023年6月20日~2023年6月30日 ・2回目の請求:2023年7月1日~2023年7月31日

2.欠勤、有給、遅刻、早退の日数 (回数)

2番目の項目には、1番目の項目に書いた休業期間中に、欠勤・有給・遅刻・早退した日数(回数)を書きます。 書類を2枚以降に分けた場合は、それぞれの期間ごとの日数(回数)を書きます。 なお、代休消化の日数は含みません。

●欠勤、半日欠勤
1日全部あるいは半日(午前だけ、午後だけ)休んだ日数
●年次有給休暇、半日有給休暇
1日全部あるいは半日(午前だけ、午後だけ)、有給休暇を取得・消化した日数
●時間有給休暇、遅刻、早退
①始業時間が遅れた=遅刻の回数
②定時より早く退勤した=早退の回数
③遅刻・早退した時間分だけ有給休暇を取得・消化した回数の合計
なお、同日に遅刻と早退をした場合は2回とカウントします。

3.休んだ日

3番目の項目には、休んだ日を書きます。
1枚の書類に3ヶ月分しか書けないので、休業期間が3ヶ月を超える場合は、2枚目以降の書類に書くことになります。
書式によって若干異なりますが、一般的には、次のように書き分けることが多いです。

休んだ日の書き方

4.休んだ期間の給与

4番目の項目には、休んだ期間の給与の変動を書きます。
有給休暇を除いた休業について給与が支給されたかどうかを書くので、基本的には「全額支給しなかった」ことになるはずですが、給与が一部支給あるいは減給した場合はその内訳と計算根拠を書きます。
1番目の項目で書いた休業期間に、実際どれだけの損害が生じているかを把握するための項目なので、実態に則して正確に書かなければなりません。 そのため、書類を2枚以降に分けた場合は、それぞれの期間ごとの給与の変動を書きます。

休んだ期間の給与の書き方

5.事故前3ヶ月に支給された給与額

5番目の項目には、事故前3ヶ月間に支給された給与額を書きます。
事故の休業で収入が減る前の直近3ヶ月間に、どのくらい収入を得ていたのかを証明するため、賞与を除いた給与や、所定勤務時間などの給与計算基礎情報を正確に書く必要があります。

事故前3ヶ月に支給された給与額の書き方

●本給と付加給
一般的には、本給に基本給を、付加給に基本給以外(時間外勤務手当や通勤手当などの基本給に追加して支給を受けているもの)を書きます。
休業損害における被害者の労働能力は、事故前の本給と付加給の合計額から判断されるので誤りのないよう注意しましょう。 ●差引支給額
差引支給額は、基本給と付加給の合計から、社会保険料と所得税のみを差し引いた金額です。
そのため、給与明細の差引金額(手取り額)とは異なる場合があります。

《毎月の給与の締切日に注意》
給与の締切日によって、直近3ヶ月の日付が変わります。
例えば締切日が20日だった場合、事故による休業の最初の日によって次のように変わります。

事故の休業の開始日 直近3ヶ月の日付
2023年6月10日 2023年2月21日~2023年5月20日までの3ヶ月間
2023年6月25日 2023年3月21日~2023年6月20日までの3ヶ月間

《事故の怪我による休業が影響して賞与が減額された場合は?》
休業損害証明書には含めず、別途「賞与減額証明書」を提出することになります。

6.社会保険や労災保険からの給付の有無

6番目の項目には、ほかの保険から受けている補償の有無を書きます。 社会保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などをすでに受領している場合、重複して休業損害を受け取ることはできません。 そのため、該当する保険名と連絡先を書く必要があります。

作成日、勤務先情報、社印等

休業損害「証明書」であるため、作成日、作成者となる勤務先の情報の記載、社印は必須です。 社印が押されていないと保険会社に被害者ご本人の自作と疑われるおそれもありますので、ご注意ください。

作成日、勤務先情報、社印等

休業損害証明書は源泉徴収票を添付して提出

勤務先が作成した休業損害証明書を受け取ったら、内容を確認して、事故前年度の源泉徴収票を添付して保険会社に提出します。 「休業損害=事故の休業による減収」なので、前年度の源泉徴収票で事故がない状態の収入を証明する必要があるのです。

源泉徴収票がない場合

源泉徴収票がない場合は、次に挙げるような所得額を証明できるほかの書類を提出することになります。 保険会社によって、「いつの分までさかのぼる必要があるか」が異なる場合があるので、あらかじめ確認しておくと安心です。

《源泉徴収票の代替となる書類の一例》

  • 事故前3ヶ月間の賃金台帳の写し
  • 雇用契約書や労働条件通知書
  • 所得証明書 など

休業損害証明書を書いてもらえないときの対処法

勤務先が休業損害証明書を書いてくれない場合、担当者が書き方を知らないという理由であれば、保険会社のウェブサイトで公開されているサンプルや、本ページで紹介した書き方を伝えることで、対応してもらえる可能性があります。 それでも勤務先が書いてくれない場合は、休業損害証明書の代わりに、「収入状況」と「休業期間」の2つを証明できる書類を提出しなければなりません。

《休業損害証明書の代替となる書類の一例》

  • 給与明細書
  • タイムカード
  • 通帳の写し など

《弁護士への相談がおすすめ》

休業損害証明書の代わりになる書類を提出し、収入と休業期間の事実を主張・立証するのは容易なことではありません。 また、イレギュラーな方法なため、相手方の保険会社が支払いを渋る可能性もあるので、弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

休業損害証明書に関するQ&A

休業損害証明書は、いつ、どんなタイミングで提出すればいいですか?

休業損害証明書を提出するタイミングについて、特別な定めはありません。 一般的には、「毎月」、「3ヶ月ごと」、「示談交渉時」のタイミングで提出されることが多いです。 事故の怪我の治療が長引くようなケースでは、被害者の経済的な負担が大きくなることから、示談成立前でも休業損害を受け取ることができます。 したがって、毎月休業損害証明書を保険会社に提出すれば、その都度休業損害を受け取ることが可能です。 もっとも、毎月書類を書いて提出するのは手間がかかるので、3ヶ月ごとのタイミングや、示談交渉時に慰謝料などと一緒にまとめて請求することもできます。

休業損害証明書の提出には期限がありますか?

休業損害証明書の提出期限に定めはありませんが、休業損害を請求できる権利は、事故日の翌日から5年を過ぎると時効によって消滅してしまいます。 これを「損害賠償請求権の消滅時効」といって、休業損害以外にも、治療費や入通院慰謝料も同様です。 したがって、遅くとも事故の損害が全て確定した段階で示談交渉を開始して、示談交渉時には休業損害証明書が提出できると安心です。

仕事を休んでない場合、休業損害証明書はもらえませんか?

仕事を休んでない場合でも、遅刻や早退などによって収入が減少していれば休業損害が請求できるので、保険会社から休業損害証明書をもらうことができます。 有給休暇を使用して仕事を休んだことで給与の減収がなかった場合も、本来、有給休暇は労働者が自由に使用できるものなので、事故の損害として休業損害が請求できます。 一方、仕事を全く休んでおらず、収入が減少していない場合には、基本的に休業損害は発生していないと判断されるので、休業損害証明書がもらえません。 仕事を休めない事情もあるかと思いますが、怪我の治療が遅れる原因にもなり得るので、なるべく治療を優先するようにしましょう。

休業損害証明書を虚偽申請したらバレますか?

休業損害証明書の虚偽申請は、ばれる可能性が高く絶対におすすめできません。 一般的に、相手方の保険会社は休業損害証明書に問題がないかを確認するため、源泉徴収票などの提出を求め、必要に応じて勤務先に内容照会を行うこともあります。 したがって、実際は仕事を休んでいないのに欠勤したと偽ったり、休業日数を水増ししたりして虚偽の申請をしても、保険会社にばれる可能性が高いです。 虚偽申請をして過大な休業損害を受け取ることは保険金詐欺などの犯罪行為なので、休業損害が支払われないばかりか、刑法上の詐欺罪で処罰されることもあります。

休業損害を受け取るには休業損害証明書が必要です。休業損害証明書を正しく書いてもらうためにも弁護士ご相談ください

休業損害証明書は、相手方保険会社に休業損害を請求するにあたって重要な書類です。 不備があると適正な休業損害が受け取れなくなってしまうので、勤務先が非協力的な場合や、書類の内容に不安がある場合は、弁護士に相談してみましょう。 交通事故に詳しい弁護士であれば、勤務先へ休業損害証明書の作成をお願いすることや、詳しい書き方の説明、書いてもらった書類内容の確認まで、安心して任せることができます。 弁護士法人ALGは交通事故案件の経験豊富な弁護士が集まっており、休業損害証明書の準備についても、個々の状況に応じたサポートが可能です。 ぜひ、お気軽にご相談ください。

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