玉突き事故の過失割合 | 慰謝料の請求先とパターン別の過失割合について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
ゴールデンウィークや夏休みといった連休に見かける「玉突き事故」は誰でも巻き込まれる可能性があります。
玉突き事故では3台以上の車両が関係するため、車ごとの落ち度、いわゆる過失割合が問題になります。
玉突き事故は安全運転をしていても巻き込まれる可能性のある事故です。本記事では「玉突き事故」の過失割合や形態などについて解説しますので、ご参考にしてください。
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目次
玉突き事故とは
一般的な「玉突き事故」とは、表のC車がまずB車に追突し、その衝撃でB車がA車に追突する事故です。
一般的な玉突き事故のほかにも、B車がA車に追突し、さらに、C車がB車に追突するという形で事故が起こる場合があります(本記事ではこれを「順次追突」と呼ぶことにします)。
一般的な「玉突き事故」では最後尾の車に過失があるとされ、追突された車には過失がないとされることが通常です。
「順次追突」の過失割合は事案によって異なるため、この場合はご相談ください。
以下では、一般的な玉突き事故を念頭に置いて解説します。
玉突き事故による過失割合(一般道)
通常の追突事故の場合、基本的には、一番初めに追突した車(最後車)の過失が100%、停車中に追突された車の過失は0%です。この考え方は何台の玉突き事故でも同じです。具体例でいうと、4車の玉突き事故が起こった場合、基本的には、一番初めに追突した車の過失が100%、停車中に追突された他の3台の過失はいずれも0%となります。
しかし、事故状況によっては過失割合が変化することもありますので、以下で解説していきます。
過失割合の修正要素(過失0にならないケース)
玉突き事故では、追突された車両には基本的には過失はありませんが、追突された側に不適切な運転操作があり、一定の落ち度がある場合には、それに応じた過失がつく場合があります。
例えば、急ブレーキをかけた場合や、急に車線変更をした場合などが考えられます。これから詳しく見ていきましょう。
前方の車の急ブレーキによる玉突き事故の場合
B車が必要なく急ブレーキを掛けたことでC車に追突され、その衝撃で停車中のA車に追突したとします。
過失割合は、停車中のA車は0%、必要なく急ブレーキを掛けたB車は30%、最初に追突したC車は70%というのが基本となると考えられます。
A車が必要なく急ブレーキを掛け、B車は急停止したがC車に追突された衝撃でA車に追突したとしましょう。
過失割合は、やむを得ずに停車したB車は0%と思われますが、A車とC車については具体的な事故状況に応じて変化する部分が多いので、この場合はご相談ください。
前方の車が割り込んできた場合
A車が割り込んできてB車がA車に追突し、C車がB車に追突した場合はどうでしょうか。
過失割合は、A車30%、B車70%が基本となります。A車とC車、B車とC車の過失割合は事案によって異なります。
A車が割り込んできて、B車がやむなく急停車したところ、C車に追突され、押し出されたB車がA車に追突した場合はどうでしょうか。この場合の過失割合は、B車は0%ですが、A車とC車については事案によって異なります。
ホワイトアウトや大雨、濃霧等、天候による視界不良が原因の場合は?
基本的に、天候の良し悪しは過失割合に影響しません。そのため、悪天候による視界不良が影響して事故を起こしてしまった場合でも、それを理由に責任が軽くなることは基本的にありません。
悪天候の日は通常以上に事故が起こりやすく、視界が悪いのは相手も基本的に同じなので、このような状況で起きた事故では事故状況が争いになることがあります。
悪天候の日にはいつも以上に気を付けて運転しましょう。
夜間等に無灯火の車が追突された場合
停車中に追突された場合、基本的に、追突された側に過失はありません。
もっとも、夜間やトンネル内など一定の状況では、ヘッドライト等を灯火させる義務があります。
そのため、夜間にハザードランプも出さずに停車していて追突された場合などには、追突された側にも10~20%程度の過失がつきやすいです。
高速道路上での追突事故における過失割合
高速道路では危険回避などのために、例外的なケースを除いて車両の駐停車が禁止されています。
高速道路の追突事故のケースを下記にまとめます。
- 1番目の車が過失事情で本線に停車
高速道路で事故を起こしたなどの理由で停車している車両に後続車両が突っ込んだ場合の過失割合は、追突された停車車両が40%、追突した後方車両が60%というのが基本です。 - 1番目の車がやむを得ない事情で本線に停車
やむなく本線に停車していた車に後続車が追突した場合の過失割合は、追突された車20%、追突した車80%というのが基本です。 - 1番目の車がやむを得ない事情で路肩に停車
「路肩」に過失なく停車していた車に後続車が追突した場合の過失割合は、追突された車0%、追突した車100%というのが基本です。 - 1番目の車が必要のない急ブレーキで停車
前方を走る車が必要のない急ブレーキを掛けて、そこに後続車が追突した場合の過失割合は、追突された車50%、追突した車50%というのが基本になります。
渋滞で停車していた場合
渋滞で停車中の車に落ち度はないので、渋滞で停車中のA車とB車にC車が追突した場合の過失割合は、事案によりますが、A車0%、B車0%、C車100%となる可能性が高いです。
しかし、渋滞でも前方の車が走行しながら渋滞に入る前に急ブレーキを踏み、後方車が追突して玉突き事故になったケースでは、急ブレーキを踏んだ前の車にも過失がつく可能性が出てきます。
また、前の車が渋滞で停車中にハザードランプをつけておらず、玉突き事故が発生した場合は、ハザードランプを付けていなかったことが過失であると主張されて争いになることがあるので、注意が必要です。
自らの過失で停車していた場合
A車←B車←C車の進行方向でA車が自らの過失で停車していた場合の過失割合は、それぞれの注意義務違反の内容・程度に応じて事案ごとに決まります。
たとえば、高速道路上の第3車線で追突事故を起こして停車していたX車に、X車の20メートル後ろで制限速度を時速20キロ超過して走行していたY車が追突した事案で、自身も追突事故を起こしたXに20%、速度超過と車間距離が短かったYに80%の過失を認めた事例があります(東京地裁 平成22年2月10日判決参照)。
高速道路では原則として駐停車が禁止されています。自らの過失で高速道路に停車していたところ、追突されて事故が起きると、停車していた車両にも高い過失割合が認められる場合があります。
事故に巻き込まれて停車したが、停車方法に過失がない場合
A車←B車←C車の進行方向で、事故に巻き込まれて退避もできないなどの理由で、A車が本線上に停車せざるを得ない状況を考えてみましょう。
このような状況で、A車の停車方法に問題がなく、発煙筒や三角表示灯などを置いていたにもかかわらず追突された場合、A車とB車の間の過失割合は0:100が基本となります。これに対して、発煙筒を焚いたりをしなかった場合には、過失割合はA:B=20:80が基本となります。A車とC車、とB車とC車の過失割合は事案によって異なります。
高速道路であっても、自分に落ち度がなく、車両を動かせない状況になることがあります。そのような場合は、発煙筒を焚いたり三角表示灯を設置するなどして停止していることを周りの車に知らせることで、追突される確率も下がり、自分の過失も減る可能性が出てきます。
車の中の発煙筒に問題ないか、三角表示灯はあるか確認しましょう。
高速道路での急ブレーキ
A車←B車←C車の進行方向でA車が高速道路で必要のない急ブレーキをかけて追突された場合の過失割合はA車とB車の関係では50:50となります。追突してしまったC車がA車やB車にどのような責任を負うのかは、C車自身の義務違反の内容・程度や事故態様等に応じて決まります。
高速道路では走行車両のスピードも速く、必要のない急ブレーキは危険な行為とされています。そのため、前方車両が必要ない急ブレーキをかけた場合は一般道に比べ、前方車両の過失割合が高くなります。
車間距離と過失割合の関係
車間距離を十分に保持していないと、不利な過失がつく場合があります。
たとえば、時速50キロで走行していたバイクが、15メートルから20m先を走るY車が車線変更禁止区間にもかかわらず減速して車線変更をしようとしたのをみて、Y車と約13.8mの地点で急ブレーキを掛けたがタイヤがロックされてY車にぶつかった事故では、バイクの側に車間距離保持義務違反として60%の過失が認定された事例があります(大阪地裁 令和元年10月10日判決参照)。
また、高速道路を走行中、前方の車が急ブレーキを掛けたので、それに続くA車も急ブレーキを掛けて停車したが、A車の後ろを走っていたB車がブレーキを掛けたが停車できず、A車に追突した事故で、B車に100%の過失を認めた事例があります(名古屋地裁 令和3年12月14日判決参照)。
保つべき車間距離は速度との関係で異なりますが、十分に車間距離をとって運転しましょう。
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玉突き事故の慰謝料は誰に請求したらいい?
玉突き事故の損害賠償請求は、過失がある人に対して行います。以下で詳しく解説していきます。
1人のドライバーに過失がある(過失100の人がいる)場合
A車←B車←C車の進行方向で過失割合がA:B:C=0:0:100の場合、追突されたA車、B車はC車に対して損害賠償請求をします。
1人に100%の過失があるということは、その1人に事故の原因が全てあるということです。
それゆえ、100%の過失がある1人が、2台分の賠償をしなければなりません。玉突き事故で100%過失がつくと負担が大きくなりやすいです。
2人以上のドライバーに過失がある場合
玉突き事故では2人以上のドライバーに過失が認められることもあります。その場合、「共同不法行為」となるので、被害者は過失のあるどちらのドライバーに対しても損害賠償請求できます。
【例】A:B:C=0:30:70の場合
AはBとCのどちらにも全額(100%)の損害賠償請求ができます。
被害者は、過失割合通りにBに30%、Cに70%と分けて請求する必要はありません。ただし、あわせて100%を超える請求をすることはできません。
玉突き事故の過失割合で揉めたら弁護士にご相談ください
玉突き事故では基本的に最後尾の車両に過失があります、追突された側にも過失がつくこともあります。
過失割合によって損害賠償の金額は大きく変わりますので、過失割合や保険会社から提示された賠償額に納得がいかない場合は弁護士に相談しましょう。
交通事故に詳しい弁護士なら、過失割合を少しでも減らせる可能性が高まります。
また、示談交渉を弁護士に依頼することで、相手方保険会社との示談交渉のストレスから解放され、治療や仕事に専念することもできます。
玉突き事故に遭いお困りの方は是非ご相談ください。
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