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交通事故の4つの解決方法とメリット・デメリットについて

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

交通事故の解決とは、事故で生じた損害を、事故加害者に金銭で賠償してもらうことです。 事故の怪我が完治した後、あるいは症状固定・後遺障害等級認定後に、解決のための交渉をスタートしてから解決に至るまでの「交通事故の解決方法」は、ひとつだけではありません。 「示談交渉」「調停」「裁判」「交通事故紛争処理センター(ADR)」の、主な4つの解決方法について、本ページでわかりやすく解説していきます。 それぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自身にあった解決方法を選択する参考になれば幸いです。

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交通事故の解決方法は4つ

交通事故の解決方法には、主に4つの方法があります。

《主な交通事故の解決方法》

①示談交渉
②交通事故紛争処理センター(ADR)
③調停
④裁判

基本的に、「示談交渉」からはじめて、当事者間で合意に至れば示談成立です。 一方、合意に至らず、示談が成立しない場合は「交通事故紛争処理センター(ADR)」や「調停」「裁判」を利用することになります。 どの解決方法を選択すべきなのかは、個別の状況によって異なります。 ご自身に合った解決方法を選択するためにも、それぞれの具体的な方法とメリット・デメリットを、次項で確認していきましょう。

①示談交渉で解決する

示談交渉とは、交通事故の当事者で話し合って解決する方法です。 交通事故の多くのケースは、この示談交渉によって解決されています。 事故の加害者と被害者の双方に過失がある場合、それぞれが加入する任意保険会社の間で示談交渉が行われます。 ですが、被害者側の過失がゼロの場合保険会社に示談交渉を依頼することができず、被害者ご自身で行うことになります。 示談交渉のプロともいえる加害者側の保険会社を相手に、ご自身で示談交渉を行うのは容易なことではありません。 弁護士費用特約を利用できれば、自己負担なく弁護士に依頼できる場合もあるので、まずはご自身の加入する保険を確認してみましょう。 以下ページで、過失ゼロの交通事故について解説していますのでご参考ください。

示談交渉のメリット

示談交渉のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 時間をかけずに早期解決することも可能
  • 費用がかからない
  • 納得できないときは、合意しなければ勝手に成立することはない
  • 弁護士に依頼したとしても、調停や裁判などを依頼した場合に比べて弁護士費用を抑えられる

示談交渉のデメリット

一方で、示談交渉には次のようなデメリットもあります。

  • 交通事故の専門知識がない場合、不利な示談内容と気づかずに合意してしまうこともある
  • 弁護士費用や遅延損害金を請求できない
  • 自力で示談交渉すると、損害賠償額が低くなる可能性がある

《損害賠償金の算定基準に注意》

交通事故の損害賠償金は
①自賠責基準
②任意保険基準
③弁護士基準

上記、3つの算定基準のいずれかで計算します。
弁護士基準の賠償額が最も高額になることが一般的ですが、保険会社の提示額は、これより低額であることが多く、注意が必要です。 以下ページで、3つの算定基準について解説していますのでご参考ください。

示談交渉の流れ

示談交渉は、損害がすべて確定してからはじめましょう。 一般的な示談交渉の流れは次のとおりです。

《示談交渉の流れ》

  1. ①交通事故発生
  2. ②治療(通院・入院)
  3. ③完治または症状固定
  4. ④示談交渉開始
  5. ⑤示談成立

損害賠償金を早く受け取りたいお気持ちもわかりますが、焦って示談することは避けましょう。 損害が確定しないまま示談が成立してしまうと、示談成立後に生じた損害は、通常は加害者側から賠償してもらえないためです。 以下ページで、示談成立までの流れについて詳しく解説していますのでご参考ください。

《後遺症が残ってしまったら?》

事故の怪我が完治せず、症状固定後に後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けた後、損害の内容が確定してから示談交渉を開始しましょう。 以下ページで、交通事故で後遺症が残った場合について解説していますのでご参考ください。

②交通事故紛争処理センター(ADR)で解決する

「交通事故紛争処理センター」とは、事故の被害者と加害者の間に入って、和解のあっせんなどをする機関です。裁判所の手続きによらず解決を目指していく、ADR(裁判外紛争解決手続き)の機関の一つになります。略して「紛セ」や「紛セン」とも呼ばれており、公正・中立な立場で、事故の被害者の迅速な救済を図ることを目的に活動しています。 示談交渉を行ったものの、争いが生じて合意できそうにない場合に利用します。

メリット

交通事故紛争処理センターを利用するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 交通事故の知識が豊富な弁護士が、和解のあっせんなどを担当してくれる
  • 裁判に比べて、解決までの時間が短く済む(一般的には3ヶ月~半年ほど)
  • 弁護士基準に近い賠償金を獲得できる可能性がある
  • 公正・中立の立場で活動してくれるため、信頼性が高い
  • 無料で利用できる

デメリット

一方で、交通事故紛争処理センターを利用する場合、次のようなデメリットもあります。

  • センターの担当弁護士の変更ができない
  • 示談よりも時間がかかる可能性がある
  • 和解のあっせんにより合意した内容に、強制執行力はない(公正証書を作成した場合を除く)
  • 利用できるケースが限られる
  • 長期化が予測される事案には適さない
  • 全国に11箇所しかないセンターに直接出向く必要がある

交通事故紛争処理センターを利用する流れ

交通事故紛争処理センターを利用する流れをみていきましょう。

《交通事故紛争処理センターを利用する流れ》

  1. ①相談の申込み
  2. ②初回相談
  3. ③和解・あっ旋の開始
  4. ④当事者双方と弁護士による話し合い
  5. ⑤あっせんの提案
  6. ⑥提案に当事者双方が合意できれば和解成立で終了

なお、和解に至らなかった場合は、「審査」の申立てをすることで審査会が開かれ、裁定案が出されます。 被害者が裁定案に同意できれば和解成立となり、加害者側は裁定結果に従うことになります。 以下のページで、交通事故紛争処理センター(ADR)の利用方法を詳しく解説しています。 ぜひご参考ください。

③調停で解決する

裁判所の手続きを利用して、話し合いで解決する「調停(民事調停)」という解決方法もあります。 裁判官と調停委員2名以上で構成された調停委員会が当事者の間に入って、合意に向けた話し合いが行われます。 示談交渉が決裂した場合に多く利用されています。

メリット

調停の手続きのメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 第三者の意見を確認できる
  • 相手と直接話し合わずに済む
  • 裁判に比べて、早く解決しやすく費用も低額
  • 裁判よりも柔軟な解決が可能
  • 調停は非公開で行われるため、プライバシーが守られる
  • 一方的に不利な結果にはならない(納得できないときは同意しなければ調停が成立しない)
  • 調停が合意で成立すると作成される調停調書は、判決と同様の効力を有し、強制執行が行える

デメリット

一方で、調停の手続きには、次のようなデメリットもあります。

  • 調停委員には、必ずしも交通事故事案に精通している人が選出されるとは限らない
  • 交通事故紛争処理センターとは違い、利用するのに費用がかかる
  • 相手が欠席し続けると、調停が不成立で終了してしまう
  • 調停は月1回程度のペースで開催されるため、示談交渉よりも時間がかかる傾向にある
  • 調停の成立には当事者双方の合意が必要なため、争点が多いなど、複雑なケースでは解決しにくい

調停の流れ

調停の流れをみていきましょう。 調停の手続きを行う際には、弁護士に依頼して同席してもらい、調停委員への受け答えをサポートしてもらうこともできます。

《民事調停の手続きを利用する流れ》

  1. ①簡易裁判所に申し立てる(申立先:相手方の住所地を管轄する簡易裁判所など)
  2. ②申立てが受理されると、調停期日が指定される
  3. ③指定された調停期日に、調停委員会の仲介のもと、合意に向けた話し合いが行われる
  4. ④当事者双方の主張が出揃い、必要な証拠調べが終了すると、調停委員会から提示案が示される
  5. ⑤提示案に当事者双方が合意できれば、調停が成立し、調停調書が作成されて終了する

なお、提示案に合意できない場合、調停不成立となります。 相手が欠席し続ける場合にも、調停委員会の判断で調停不成立として手続きが終了することがあります。

④裁判で解決する

示談交渉をしたものの対立が深く合意できない場合や、交通事故紛争処理センターや調停の手続きを利用しても解決には至らなかった場合などにおいて利用するのが、「裁判(民事裁判)」です。 裁判とは、裁判所に判断を仰いで解決する方法です。 当事者双方の合意は必要ないので、交通事故の問題を解決するための最後の手段といえます。 なお、裁判の途中で和解することもあります。

メリット

裁判をするメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 弁護士基準に沿った賠償額を獲得できる可能性がある
  • 公平公正で信頼性が高い
  • 複雑な事案でも解決することが見込める
  • 判決には強制執行力があり、約束が守られない場合は強制執行が行えます
  • 被害者が勝訴した場合、遅延損害金や弁護士費用を請求できる

デメリット

一方で、裁判をすることには次のようなデメリットもあります。

  • 訴訟費用がかかる
  • 時間がかかる(争点の内容によっては1年以上かかるケースもある)

裁判の流れ

裁判の流れをみていきましょう。 裁判は当事者本人だけで行うこともできますが、高度な専門知識が必要になるので、弁護士を代理人にして争っていくのが一般的です。

《裁判の手続きを利用する流れ》

  1. ①裁判所に訴状を提出する
  2. ②第1回口頭弁論期日が指定される
  3. ③指定された期日に、口頭弁論が行われる(証拠集め・提出)
  4. ④争点・証拠が整理され、裁判所から和解案の提示があり、和解協議を行う
  5. ⑤和解が成立すると、和解調書が作成されて裁判が終了する

なお、和解が成立しない場合は、本人尋問と証人尋問が行われた後、再度和解が勧められます。 それでも和解が成立しない場合は、裁判所から判決が下されます。 下記ページで、交通事故の損害賠償請求で裁判を行うケースについて、詳しく解説しています。 裁判の具体的な流れなども説明していますので、ぜひご覧ください。

交通事故で解決が難しいケースとは?

交通事故で解決が難しい、主なケースをいくつかご紹介します。 ご自身に当てはまる場合、ひとりで抱え込まずに、弁護士に相談・依頼することを検討してみましょう。

《解決が難しいケース》

  • 過失割合や損害賠償金について合意できない
  • 加害者の誠意が感じられない
  • 保険会社の対応が悪い
  • 治療費の打ち切りを打診された
  • あとから後遺障害が発覚した など

以下のページで、ケースごとの解決方法を解説していますのでご参考ください。

解決を弁護士に依頼するメリット

交通事故問題の解決は、弁護士に依頼することで多くのメリットがあります。 いくつか代表的なメリットをご紹介します。 弁護士に依頼するかどうか迷われている方のご参考になれば幸いです。

  • 過失割合や損害賠償金について、適正な判断をしてもらえる
  • 弁護士基準の損害賠償金まで増額できる可能性がある
  • 法的根拠に基づいた主張ができる
  • 加害者側との交渉や各種手続きを、被害者に代わって弁護士が行える など

《弁護士に依頼するデメリットはある?》

デメリットを強いて挙げるとすれば、弁護士費用がかかることです。 もっとも、保険会社が弁護士費用を負担してくれる「弁護士費用特約」が利用できれば自己負担を抑えて弁護士に依頼することができます。 弁護士費用特約の詳細は、以下ページをご参考ください。

交通事故の解決を弁護士に依頼して成功した事例

弁護士基準の満額ともいえる約355万円の賠償金で示談に至った事例

ご依頼者様の車が優先道路を走行中、丁字路交差点で左側から出てきた車に衝突されたという事故でした。 ご依頼者様は、この事故で頚椎捻挫や胸骨骨折などの怪我を負い、人身損害の示談交渉をお願いしたいとして、私たちにご依頼くださいました。 ご依頼者様にはまず治療に専念してもらい、症状固定となった後、資料を収集して後遺障害等級の申請手続きを行いました。その結果、14級9号が認定され、この等級に基づき示談交渉を重ねていきました。そして、粘り強く交渉を進めていったことで相手方の保険会社も折れ、弁護士基準の満額といえる約355万円(自賠責保険分も含む)の賠償金という内容で示談を成立させることができました。

弁護士に依頼し紛争処理センターへ申し立てた結果、賠償金を約400万円増額した事例

事故当時40代だったご依頼者様は、事故の被害で左中手骨骨折や右足趾骨折などの怪我を負い、併合13級の後遺障害が認定されていました。 相手方の保険会社から、「ご依頼者様の過失割合3割」「後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間を5年間」とする賠償案が提示されたものの、内容に納得がいかず、私たちにご依頼くださったという事案です。 早速交渉にあたったところ、ご依頼者様の過失割合を2割に修正できたものの、後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間や慰謝料額で意見が食い違い、一向に話がまとまらないため、交通事故紛争処理センターのあっせん手続きを利用することにしました。 そして、本件と類似する裁判例をもとに主張・立証などをしていった結果、こちらが主張する内容に沿った「労働能力喪失期間は12年間」「慰謝料は弁護士基準の満額」とするあっせん案が提示され、当初の賠償案より約400万円増額する内容で、和解成立に至りました。

調停で弁護士が主張・立証活動を行った結果、賠償金を約1500万円増額した事例

横断歩道を青信号で渡っていた被害者が、右折してきた車にはねられたという事故でした。3日後に被害者は亡くなり、その相続人であるお子さんから、損害賠償請求についてご依頼を受けることとなりました。 まずはこちらの請求額を相手方に提示しましたが、「3000万円程度の支払いしかできない」との一点張りで、なかなか合意には至りませんでした。その後、相手方にも弁護士がつき、民事調停を行うこととなりました。 調停では逸失利益が主な争点となりましたが、こちらの請求内容を裏付ける資料を示しながら、根拠を丁寧に説明していきました。その結果、既払い分を除いて、賠償金を4500万円とする内容で調停成立となり、約1500万円の増額に成功しました。

弁護士に依頼し裁判を起こした結果、約1000万円の損害賠償金を獲得した事例

自転車で走行中に脇道から出てきた車に衝突され、右膝前十字靱帯損傷などの怪我を負ったご依頼者様が、相手方から提示された賠償額に納得がいかないとして、弊所にご依頼くださった事案です。 相手方の提案内容は、慰謝料も逸失利益も弁護士基準より低い金額となっており、その理由を確認すると、ご依頼者様の怪我は既往症の影響によるものと主張してきたため、怪我と事故の因果関係が争点となりました。 お互いが考える賠償額には相当な開きがあったため、やむなく裁判に踏み切りました。 裁判では、協力医を探して医学意見書を作成してもらうなどして、今回の怪我と事故には因果関係があると反論していきました。 そして、約3年にわたる審理の結果、こちらの主張に近い内容で和解成立となり、約1000万円の賠償金を獲得できました。

交通事故の解決は、いずれの方法でも弁護士におまかせください

交通事故の主な4つの解決方法をご紹介してきました。 いずれの方法でも、「被害者の方に代わって交渉する」、「法的根拠に基づいた主張・立証をする」など、弁護士にできることが様々あります。 どの解決方法がご自身に適しているのか、判断に迷われている方は、まずは弁護士にご相談ください。 弁護士法人ALGには、交通事故問題に強い弁護士が多く在籍し、示談交渉や調停・裁判はもちろん、交通事故紛争処理センターの手続きにおいても、サポートの実績があります。 経験豊富な弁護士が、個々のご事情にそったアドバイス・サポートで、交通事故の被害に遭われた方のお力になれるよう尽力いたします。 早期解決・損害賠償金の増額など、満足のいく解決を一緒に目指していきましょう。

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