自賠責保険の支払基準が変わりました
目次
自賠責保険の支払基準改正の告示・施行
2019年(令和元年)10月4日、自賠責保険の支払基準の改正案が告示され、2020年(令和2年)4月1日に施行されます。これに伴い、施行日以降の交通事故の損害賠償の算定には、新基準が適用されることとなります。 詳細は後述しますが、主に以下の項目が改正される結果、基本的に基準が高くなり、ライプニッツ係数(中間利息控除率)も高くなります。そのため、被害者にメリットがある内容となっているといえます。
- 入通院慰謝料
- 休業損害
- 入院中の看護料
- 自宅看護料または通院看護料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡本人の慰謝料
- 葬儀費用
- 就労可能年数
- ライプニッツ係数
- 平均余命年数表
- 平均給与額(全年齢、年齢別)
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主な改正内容について
①傷害(治療期間の損害)による損害の保険金等の支払に関する改正 入通院慰謝料、休業損害、看護料について、増額となります。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
入通院慰謝料 | 4200円/日 | 4300円/日 |
休業損害 | 5700円/日 | 6100円/日 |
入院中の看護料 | 4100円/日 | 4200円/日 |
自宅看護料または通院看護料 | 2050円/日 | 2100円/日 |
例として、【むちうちを受傷した主婦が、通院3ヶ月(90日)、実通院40日】の治療を行った場合の入通院慰謝料を、改正前後で比較してみましょう
- 対象日数:90日<40日×2=80日
- 改正前:4200円×80日=33万6000円
- 改正後:4300円×80日=34万4000円
- 差額:34万4000円-33万6000円=8000円
同じ条件でも、8000円の差があることがおわかりいただけると思います。
②後遺障害による損害の保険金等の支払に関する改正 下記表のとおり、13級と14級を除き、増額となります。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
1級 (被扶養者あり) |
1600万円 (1800万円) |
1650万円 (1850万円) |
2級 (被扶養者あり) |
1163万円 (1333万円) |
1203万円 (1373万円) |
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
1級 (被扶養者あり) |
1100万円 (1300万円) |
1150万円 (1350万円) |
2級 (被扶養者あり) |
958万円 (1128万円) |
998万円 (1168万円) |
3級 (被扶養者あり) |
829万円 (973万円) |
861万円 (1005万円) |
4級 | 712万円 | 737万円 |
5級 | 599万円 | 618万円 |
6級 | 498万円 | 512万円 |
7級 | 409万円 | 419万円 |
8級 | 324万円 | 331万円 |
9級 | 245万円 | 249万円 |
10級 | 187万円 | 190万円 |
11級 | 135万円 | 136万円 |
12級 | 93万円 | 94万円 |
13級 | 57万円(※変更なし) | |
14級 | 32万円(※変更なし) |
③死亡による損害の保険金等の支払に関する改正
下記表のとおり、本人分の死亡慰謝料と葬儀費用が増額となります。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
死亡慰謝料 本人分 |
350万円 | 400万円 |
葬儀費用 | 60万円※立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、 100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする。 |
100万円 |
なお、就労可能年数、ライプニッツ係数、平均余命年数表、平均給与額(全年齢、年齢別)につきましては、ページ末尾をご覧ください。
改正が行われる理由とは
自賠責保険の支払基準は、以下のような経緯を経て改正がなされています。
- 当初基準:2002年(平成14年)4月1日施行
- 前回:2010年(平成22年)4月1日施行
- 今回:2020年(令和2年)4月1日施行
実に10年ぶりの改正であることがわかりますが、 そもそも、なぜ自賠責保険の支払基準の改正が行われるのでしょうか?
理由1:民法改正に伴う法定利率の変更(5%→3%)
民法もまた、2020年(令和2年)4月1日を施行期日として、改正が行われます。この民法改正に伴い、法定利率が年5%から3%に改正されます。交通事故の損害賠償額の算定においては、将来の収入を現在価値で評価する場合、法定金利により中間利息控除を行います(主にライプニッツ係数を使用。)。逸失利益といった将来にわたる損害賠償の額を算出する際、5%と3%では、数値が大きく異なるため、法定金利の変更を反映させる必要があるのです。
理由2:平均余命、物価水準、賃金水準の変動や支払実態の反映
前回の施行から10年を経ることにより、この間に、平均余命、物価水準、賃金水準の変動や、支払実態の変動が起こりました。これらは、政府が発表している統計を基にしており、自賠責の支払基準においても現実に即した内容を反映させる必要があります。
別表(ライプニッツ係数・平均給与額等)に関する改正
下記表のとおり、変更となります。
別表Ⅱ-1 就労可能年数とライプニッツ係数表
(1)18歳未満の者に適用する表
(2)18歳以上の者に適用する表
(注) 1.18歳未満の有職者及び家事従事者並びに18歳以上の者の場合の就労可能年数については、
(1)52歳未満の者は、67歳とその者の年齢との差に相当する年数とした。
(2)52歳以上の者は、「第22回生命表(完全生命表)」による男又は女の平均余命のうちいずれか短い平均余命の1/2の年数とし、その年数に1年未満の端数があるときは、これを切り上げた。
2.18歳未満の者(有職者及び家事従業者を除く。)の場合の就労可能年数及びライプニッツ係数は次のとおりとした。
(1)就労可能年数 67歳(就労の終期)とその者の年齢との差に相当する年数から18歳(就労の始期)とその者の年齢との差に相当する年数を控除したもの
(2)ライプニッツ係数 67歳(就労の終期)とその者の年齢との差に相当する年数に対応するライプニッツ係数から18歳(就労の始期)とその者の年齢との差に相当する年数に対応するライプニッツ係数を控除したもの
別表Ⅱ-2 平均余命年数とライプニッツ係数表
(注) 平均余命年数は「第22回生命表(完全生命表)」による平均余命の年数とし、その年数に1年未満の端数があるときは、これを切り下げた。
別表Ⅲ 全年齢平均給与額(平均月額)
男性 | 409,100円 | 女性 | 298,400円 |
---|
(注) 本表は、平成30年賃金構造基本統計調査第1表産業計(民営+公営)により求めた企業規模10~999人・学歴計の男女別の全年齢平均給与額(臨時給与を含む。)をその後の賃金動向を反映するため1.003倍し、その額に100円未満の端数があるときは、これを四捨五入したものである。
別表Ⅳ 年齢別平均給与額(平均月額)
(注) 本表は、平成30年賃金構造基本統計調査第1表産業計(民営+公営)により求めた企業規模10~999人・学歴計の男女別の年齢階層別平均給与額(臨時給与を含む。)をその後の賃金動向を反映するため1.003倍し、その額に100円未満の端数があるときは、これを四捨五入したものである。
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