交通事故によるめまいで慰謝料はもらえる?症状や後遺障害等級について

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故後、頻繁に“めまい”が起こるようになることがあります。 「めまい=疲れている」と結び付けられる方が多くいらっしゃいますが、めまいで後遺障害が認められることもあります。後遺障害が認められれば、後遺障害慰謝料を請求できますが、めまいでどのような後遺障害が認定されるのでしょうか? そこで本記事では、「めまいによる後遺障害」に着目し、後遺障害慰謝料の相場やめまいが発生する代表的なケガなどについて、詳しく解説していきます。
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目次
交通事故によるめまいで慰謝料はもらえる?
めまいを理由に慰謝料をもらうためには、様々な検査などで“めまいと交通事故との因果関係”を証明し、後遺障害等級認定を受ける必要があります。 しかし、めまいには様々な種類や症状があり、いずれも明確に診断することが難しいとされています。そのため、「めまいがする」という自覚症状だけでは因果関係を医学的に説明するには乏しいことから、後遺障害等級認定を受けることができない可能性が大きいです。 めまいに付随する症状と交通事故との因果関係、つまり、「めまいは交通事故が原因で生じた」と医学的に証明でき、後遺障害等級認定を受けられなければ、慰謝料をもらうことはできません。 なお、後遺障害による慰謝料については、以下のページにてさらに詳しく解説しております。 ぜひあわせてご覧ください。
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交通事故によるめまいの症状や原因は?
交通事故によるめまいには、以下のような種類があります。
- 《回転性めまい》
自分は動いていないにもかかわらず、自分や周囲がぐるぐる回っているように感じられるもの - 《浮動性めまい》
身体がふわふわ浮いているように感じられるもの
このようなめまいの症状が生じてしまう原因は、主に次のとおりと考えられています。
- むちうちが原因
- 脳挫傷など、頭部に外傷を負ったことが原因
いずれも、交通事故による強い衝撃が首から頭にかけて加わったことで受傷するケガです。 受傷の程度によっては、めまいの症状だけでなく吐き気を伴うこともあります。
めまいの後遺障害慰謝料の相場はいくら?
治療を続けてもめまいが治らない場合には、後遺障害等級認定の申請を視野に入れる必要があります。 めまいの症状や程度によって後遺障害等級認定されれば、「後遺障害慰謝料」を受け取ることができるからです。 後遺障害慰謝料の相場は、3つの算定基準のうちどの基準を用いるかによって異なります。
- 自賠責基準
自動車損害賠償保障法に基づく、基本的な対人賠償の確保を目的とした基準です。 - 任意保険基準
営利を目的とした各保険会社によってつくられた基準です。 - 弁護士基準(裁判基準)
過去の裁判例を基につくられた基準です。
基本的には、自賠責基準 < 任意保険(自動車保険)基準 < 弁護士(裁判)基準の順に高額となり、弁護士基準が最も高い基準となっています。 下表では、めまいで認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の相場をまとめています。ぜひご参考になさってください。 ※なお、任意保険基準の算定基準は非公開のため、割愛しています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 |
9級10号 | 249万円 | 690万円 |
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
めまいが発生する代表的なケガと後遺障害等級
交通事故によってめまいが発生してしまう代表的なケガには、「良性発作性頭位めまい症」や「むちうち」「バレリュー症候群」などが挙げられます。 これらのケガによるめまいで強いられた精神的苦痛に見合った賠償金を受け取るためには、残存した後遺症の程度に応じた適切な後遺障害等級認定を受けることが重要です。 では、めまいが発生する代表的なケガとそのケガで受けられる後遺障害等級について解説していきます。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位は、「りょうせいほっさせいとうい」と読みます。 交通事故の衝撃によって内耳にある重力を感じ取る耳石器から耳石がはがれ、回転感を感じ取る半規管に誤って入ることで生じる回転性のめまいです。 自然治癒することも多いですが、半規管内の耳石を取り出す「浮遊耳石置換法」と呼ばれる治療法があり、治るまでの期間は比較的短いといわれています。 なお、良性発作性頭位めまい症で認定される可能性のある後遺障害等級は、“12級13号”または“14級9号”と考えられています。
後遺障害等級 | 認定要件 |
---|---|
12級13号 | めまいの自覚症状について、通常の労務に服することはできるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められ「局部に頑固な神経症状を残すもの」と判断できること。 |
14級9号 | めまいの自覚症状について、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、医学的にみてめまいが「局部に神経症状を残すもの」と合理的に推測できること。 |
外リンパ瘻(ろう)
交通事故の衝撃で、内耳の蝸牛層(かぎゅうそう)や前庭窓(ぜんていそう)から外リンパ液が流れ出ることによって平衡感覚や音を司る有毛細胞に障害が生じ、めまいや難聴等が起きる症状です。安静にしていれば自然治癒することもありますが、症状が回復しない場合には、外リンパ瘻閉鎖術が必要になることもあります。 なお、外リンパ瘻で認定される可能性のある後遺障害等級は“12級13号”と考えられています。
後遺障害等級 | 認定要件 |
---|---|
12級13号 | めまいの自覚症状について、通常の労務に服することはできるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められ「局部に頑固な神経症状を残すもの」と判断できること。 |
むちうち
交通事故での追突・急停車の衝撃によって首に不自然な力が加わり、首周辺の筋肉や神経が傷ついたことで生じる症状です。むちうちは傷病名ではなく、「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」と診断されるものにあたります。 むちうちの主な症状は強い頚部痛ですが、めまいや耳鳴り、頭痛などが発生することもあります。 なお、むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級は“12級13号”または“14級9号”と考えられています。
後遺障害等級 | 認定要件 |
---|---|
12級13号 | めまいの自覚症状について、通常の労務に服することはできるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められ「局部に頑固な神経症状を残すもの」と判断できること。 |
14級9号 | めまいの自覚症状について、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、医学的にみてめまいが「局部に神経症状を残すもの」と合理的に推測できること。 |
むちうちについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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バレリュー症候群
首の損傷によって自立神経(主に後頭部交感神経)が直接的もしくは間接的に刺激を受けて生じる症状で、めまい、耳鳴り、頭痛、脱力感、動機、不眠などが現れます。ただし、自律神経の乱れによる症状は立証が難しいことから、明確な原因については解明されていません。 なお、バレリュー症候群で認定される可能性のある後遺障害等級は“12級13号”と“14級9号”と考えられていますが、バレリュー症候群はレントゲンなどの画像検査を行っても明らかな異常が認められることが少ないため、基本的には14級9号が認定となります。
後遺障害等級 | 認定要件 |
---|---|
14級9号 | めまいの自覚症状について、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、医学的にみてめまいが「局部に神経症状を残すもの」と合理的に推測できること。 |
バレリュー症候群について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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軽度外傷性脳損傷
軽度外傷性脳損傷は、Mild Traumatic Brain Injury=(略称:MTBI)とも呼ばれています。 交通事故により頭に強い衝撃または強く揺さぶられることで、脳に衝撃が伝わり、めまい、頭痛、耳鳴り、てんかん発作などの症状が脳の損傷によって現れます。軽度外傷性脳損傷の「軽度」とは、症状が軽いという意味ではなく、「意識障害の程度が軽度であった」ということを指します。 また、軽度外傷性脳損傷は画像所見に異常が認められにくいことから、後遺障害等級認定されないケースがほとんどです。そのため、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害の発症が認められる場合に限り、症状の程度によって後遺障害として認定される傾向にあります。
めまいで後遺障害等級の認定を受ける流れ・方法
交通事故に遭った際、まずは整形外科を受診される方が多いでしょう。 しかし、めまいの場合には内耳機能の障害である可能性が考えられ、CTやMRIなどの画像検査だけでは原因が判明しないことがあります。そのため、医師にめまいの症状について詳細に説明・相談をして“耳鼻科”を受診するようにしましょう。 受診後は、医師の指示に従い必要な検査を受け、めまいと交通事故に因果関係が認められる場合には、「後遺障害診断書」を医師に作成してもらい、後遺障害等級の認定を受けてください。
《point》
医師に後遺障害診断書を作成してもらう際は、自覚症状や検査結果についてしっかりと記載してもらうことが重要です。漏れがないかなどの確認は怠らないように注意してください。
交通事故によるめまいが後遺障害認定された裁判例
【福岡地方裁判所 平成30年3月30日判決 平成28年(ワ)415号】
<事案の概要>
相手方が運転する路線バスが発進時に急ブレーキをかけたことにより、被害者が左耳小骨離断等の傷害を負い、左難聴および回転性めまい等の後遺障害が生じたことについて、相手方および相手方の使用者に対して損害賠償金2552万9000円の連帯支払を求めた事案です。
<裁判所の判断>
裁判所は、被害者が事故の際に左頭部を窓ガラスにぶつけたことは認めたものの、因果関係が乏しいことを理由に、左難聴の原因が耳小骨離断によるものとは認めませんでした。 しかし、回転性めまいについては、外リンパ廔以外の原因(たとえば、ストレスなど)によるものだと認めるに足りる証拠がないことから、事故との因果関係を認めました。 そして、受傷当初から症状があり、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められたため、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害等級第12級13号に該当すると認めました。
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交通事故によるめまいが続く場合、慰謝料を請求できる可能性があります。お気軽に弁護士へご相談ください
めまいで慰謝料を受け取るためには、後遺障害として認定される必要があります。 しかし、めまいは自覚症状について他覚的所見で異常が認められないことが多いため、後遺障害として認定されにくい傾向にあります。 この点弁護士であれば、適切な後遺障害等級認定に向けた通院の仕方や自覚症状の伝え方などについてアドバイスすることが可能です。それだけでなく、後遺障害診断書に不備がないかの確認や意見書を作成することもできるため、後遺障害等級認定の可能性を高めることに期待できます。 私たち弁護士法人ALGには、交通事故の知識だけでなく、医療知識にも長けた弁護士が多数在籍しております。事故後めまいが続きお悩みの方は、ぜひお気軽に弁護士法人ALGへご相談ください。
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