交通事故で神経痛の後遺障害が残ることはあるのか
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故に遭ってしまい、その後、神経痛に悩まされている方は多いのではないでしょうか?
症状によっては、日常生活がままならないほどの重い神経痛もあります。本記事では、神経痛についての詳細、後遺障害等級の認定を獲得するために有益な情報などを解説していきます。
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目次
神経痛とは
神経痛とは、病名ではなく、末梢神経が支配する領域に急に生じる激しい痛みの症状の総称です。 抹消神経と呼ばれるものには、自律神経や運動神経、感覚神経がありますが、このうち感覚神経に何らかの原因で刺激を受けると、末梢神経に沿って痛みが生じます。症状には、痛みのほか、痺れといった症状が発作的、反復的に起こります。 また、神経痛は、症候性神経痛(痛みの原因がわかる)と、特発性神経痛(痛みの原因がわからない)とに分類することができます。 さらに、神経痛の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 特定の末梢神経の支配領域と、痛む部位が一致している
- 鋭く激しい痛みが発作的に起こり、持続時間は数秒から数分間と短いものの、再発を繰り返す
- 痛みのない時に指で押すと痛みが起こる、痛みの生じる末梢神経の部位である圧痛点(あっつうてん)が存在する
- 痛みのない時に指で刺激すると痛みが誘発される、皮膚や粘膜といった引き金帯(ひきがねたい)が存在する
- 特定の姿勢になったり、咳やくしゃみをしたりすると痛みが誘発される
- 中年以降の人に発症が多い
神経痛の治療方法
神経痛と診断された場合、その原因を究明することが重要になりますが、まず一般的には以下のような治療を行います。
- 薬物療法…解熱鎮痛剤や非ステロイド抗炎症薬、筋弛緩薬、抗痙攣薬等で痛みを和らげる。
- 安静保護療法…自身で、患部が痛む場合は休養をとる、痛みが和らぐ姿勢をとる、というように安静にする。
- 理学療法…整形外科で行われる。牽引療法(痛みがある部分を引っ張ることで、神経への圧迫を和らげる)や、赤外線照射(痛みがある部分を温める)、固定療法(コルセット等を痛みがある部分に装着し、安静にする)が行われる。
- 神経ブロック…痛みがある部分の末梢神経に麻酔薬を入れ、痛みを止める。
- 鍼灸療法…鍼や灸で痛みを抑える。効果は個人差がある。
- 手術…椎間板ヘルニア、背椎や脊髄に腫瘍等がある場合は、手術が必要となる。
交通事故により生じるおそれのある症状
交通事故で神経痛が生じうる典型的な傷病例を挙げ、症状について簡単に説明しましたので、ご覧ください。
むちうち
むちうちとは、いわゆる首の捻挫のことを指し、交通事故では、衝突の衝撃や急ブレーキなどで首に不自然な力がかかることで起こります。 主な症状としては、首の痛みや、肩の凝り、動かすことが困難等といったものがあります。交通事故に遭った際は、事故直後ではなく数日後に症状が出る場合もあるため、事故直後に怪我がないと思っても、2、3日~1週間は体の様子に注意しましょう。 その他のむちうちについての詳細は、以下をご覧ください。
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椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、背骨の腰部でクッションの役割を担っている軟骨(椎間板)の組織の一部が飛び出してしまうことを指します。 この飛び出した一部が神経を圧迫することにより、腰や足に痛みや痺れを引き起こします。 椎間板ヘルニアは、日常生活における姿勢や動作、遺伝が関係して発症することが多いです。さらに、加齢に伴い発症するリスクが高くなります。 椎間板ヘルニアについての詳細は、以下のページをご覧ください。
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坐骨神経痛
座骨神経痛は、腰から足にかけて伸びている坐骨神経が圧迫されたり刺激されたりすることで痛みが生じるもので、原因は椎間板ヘルニアなど様々です。 痛みや痺れが生じる範囲は幅広く、腰から足先まで生じ得ます。また、症状が重度になると下肢の麻痺や、痛みによる歩行障害が生じる場合もあります。坐骨神経痛について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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肋間神経痛
肋間神経痛とは、胸腹部に分布する24本の肋間神経と呼ばれる神経のうち、特定の神経に痛みが生じる症状のことをいいます。 痛むのは、主に背骨から片側の1本の肋骨に沿った、限られた部分です。原因は様々ですが、交通事故による肋骨の骨折や、肋軟骨(ろくなんこつ)の炎症等、外傷により生じることがあります。 肋間神経についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
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三叉神経痛
三叉神経痛とは、顔の温痛覚を脳に伝える神経である三叉神経が、血管等によって圧迫されることで生じる痛みをいいます。針で刺されたような焼けつくような激しい痛みが、顔面の左右どちらかに発作的に発生することが多いです。痛みの持続時間は、数秒から長くとも2分以内です。
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交通事故に遭いお困りの方へ
交通事故が原因で神経痛になることはあるのか?
神経痛は、神経が損傷したり、圧迫されたりすることによって起こるケースがほとんどです。 交通事故によりそのようなことが起こると、神経痛が生じるおそれがあります。治療を受けても痛みが残存し、交通事故との因果関係が証明できるのであれば、後遺障害等級認定の申請を考えましょう。 もっとも、症状が存在することを証明するのが難しい神経痛で後遺障害等級認定を受けるのは、非常に難しいのが実情です。 しかし、神経痛が後遺障害として認められ、等級認定された裁判例もあります。以下で、ご紹介します。
神経痛が後遺障害として認められた裁判例
松山地方裁判所今治支部 平成28年2月9日判決
<事案の概要>
原告が普通自動車を運転していたところ、エンストのため路上に停車中の軽貨物ボックスカーを運転していた被告が、左方に注意することなく車を発進させたため、左方から進行してきた原告通乗用車と衝突した事案です。 本件では、原告が頚椎捻挫により後遺障害14級の認定を受けていたのですが、原告の痛みが事故直後にはなく、事故から2日後に病院に行っていることなどの理由により、被告が怪我や後遺障害の有無について争いました。
<裁判所の判断>
裁判所は、原告の受傷の有無・程度に関しては、本件事故によって頚椎捻挫と腰椎捻挫を負ったものと認めました。原告は、事故直後に痛みは生じていなかったものの、事故当日に痛みが生じ、2日後には病院を受診しました。 受診時、医師が頚椎捻挫と腰椎捻挫と診断したことや、事故に遭う前は頚部や腰部の痛みで通院していなかったこと、事故時の原告車と被告車の速度が本件事故態様に相応していることなどの理由から、原告の受傷は本件事故によるものとしました。 また、原告の後遺障害の有無・程度に関しても、頚部痛・腰痛に、後遺障害等級14級9号を認めました。理由としては、上記のとおり、原告は頚椎捻挫・腰椎捻挫を受傷したこと、事故の2日後に病院を受診し、継続的に入通院・治療を受けたものの痛みが残っていたこと、自賠責保険の基準においてもそれぞれ同じ等級が認められたことを挙げています。
神経痛で認定される可能性のある後遺障害等級と慰謝料
神経痛が後遺障害として認められる可能性のある後遺障害等級は、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と14級9号「局部に神経症状を残すもの」の2つです。 神経痛について他覚的所見があり、症状を医学的に証明できる場合には12級13号が、他覚所見がなく、医学的説明に留まる場合には14級9号が認定されます。
請求できる慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円※ | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
神経痛の後遺障害認定は非常に難しい
神経痛で後遺障害等級の認定を得るためには、他覚的所見が存在し、交通事故と後遺症の因果関係を証明する必要があります。 しかし、わずかな神経損傷に起因する神経痛の場合などでは、MRI検査やCT検査といった精密な画像検査でも異常を発見できないことがあります。その場合、「他覚的所見がない」とされてしまい、後遺症の存在や、交通事故との因果関係の証明が困難となり、後遺障害の認定が非常に難しくなってしまいます。
神経痛の後遺障害認定のポイント
神経痛について後遺障害の認定を受けるためのポイントは、交通事故に遭った直後から継続的に治療を受け、自覚症状を含め自身の状態をきちんと医師に説明することです。 そのためにも、弁護士から治療の受け方についてのアドバイスを受けることをおすすめします。加えて、後遺障害診断書の書き方等についてもアドバイスを受ければ、適切な後遺障害等級が認定される可能性がより高くなります。
交通事故による神経症状で後遺障害等級の認定を受けたい方は弁護士にご相談ください
交通事故による神経症状について、後遺障害等級の認定を受けるのは非常に難しいことです。後遺障害等級には、法的知識だけでなく医学的知識も必要になるからです。 この点、後遺障害等級認定申請の経験があり、医療に強い弁護士はどちらの知識も持ち合わせています。そのような弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の要点を踏まえたアドバイスを受けられますので、認定を受けられる可能性が高くなります。 また、煩雑な申請手続、必要な資料の収集等も弁護士が代行いたしますので、それらに煩わされることもありません。神経痛について適切な後遺障害の認定を受け、適正な賠償を受けるためにも、後遺障害等級認定申請の経験が豊富で、医療問題にも強い弁護士が多数在籍する弁護士法人ALGにぜひご相談・ご依頼ください。
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