交通事故で腰部脊柱管狭窄症になった時の後遺障害
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
「腰部脊柱管狭窄症」という傷病名をご存知でしょうか?交通事故後、歩いていると足の痛みが増してきて歩けなくなってしまうような場合、もしかしたら腰部脊柱管狭窄症かもしれません。
腰部脊柱管狭窄症とはどのような傷病なのか、詳しく解説していきます。
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目次
腰部脊柱管狭窄症とは?交通事故で腰部脊柱管狭窄症になってしまったら?
脊柱管狭窄症とは、脊椎の椎孔が連なってできた脊柱管の一部が狭くなってしまい、中を通る脊髄や神経根が圧迫されることにより腰や足の痛みが出る傷病です。 日本人の脊柱管の平均の大きさは、前後径約15mmです。症状が出るまでの脊柱管の狭まりの度合いには個人差がありますが、脊柱管が12mm以下になると、絶対的に狭窄しているとみなされます。 脊柱管の狭窄は、腰椎(腰の骨)で起こるケースが多いため、ここでは「腰部脊柱管狭窄症」に焦点を当てて説明していきます。 脊柱管狭窄症の発症原因の1つとして、交通事故があげられます。交通事故の強い衝撃により、
- ・脊椎(背骨)が変形
- ・脊椎間の椎間板が変形
- ・脊椎と脊椎とを繋いでいる靭帯が肥厚
してしまうと、脊柱管狭窄症を発症するおそれがあります。 脊柱管狭窄症は生命維持には影響を及ぼさない傷病ですが、放置せず、適切な治療を受けましょう。
腰部脊柱管狭窄症の症状
腰部脊柱管狭窄症の症状は、次のようなものです。
- ・足のしびれや感覚の異常
- ・腰痛
- ・歩行時に増す足の痛み
⇒ この症状により、間欠性(かんけつせい)跛行(はこう)の症状が現れることがあります。 間欠性跛行とは、歩くと足に痛みやしびれが生じてきて歩けなくなるものの、姿勢を変えて少し休むとまた歩けるようになる現象をいいます。 こうした足の痛みやしびれは、前かがみになったり座ったりすると、腰が曲がることにより狭くなった脊柱管が広がるため、楽になります。
病院で治療を受ける
腰部脊柱管狭窄症が疑われる場合、病院では、脊柱管の狭まりの度合いや脊髄の圧迫の度合いを検査します。 検査方法は、画像検査が主で、
- ・CT画像検査、X線検査:主に骨の変形、靭帯の骨化を確認する
- ・MRI画像検査:脊髄の状態を確認する
- ・神経根造影・神経根ブロック:局所麻酔やステロイド剤で症状を緩和しつつ、ヨード造影剤を使用して、神経根の状態を確認する
腰部脊柱管狭窄症と関係のある後遺障害と慰謝料
腰部脊柱管狭窄症の症状は、足のしびれや感覚の異常、腰痛、間欠性跛行等といった、神経症状です。 そのため、一定の条件を満たした場合には、神経症状の後遺障害が認定されます。 認定の条件は、以下のようなものです。
神経症状
神経症状の後遺障害では、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」あるいは14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定されます。 どのように等級が区別されるかというと、画像検査等により、脊柱管の狭窄が確認できる等、足のしびれや感覚の異常、腰痛、間欠性跛行等といった神経症状が医学的に証明できる場合には12級13号が認定され、医学的説明に留まる場合には14級9号が認定されます。
請求できる慰謝料
腰部脊柱管狭窄症の場合に認定され得る後遺障害等級と、等級に対応した後遺障害慰謝料を整理した表です。
等級 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。
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医療に強い弁護士への依頼をおすすめします
腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管を取り囲む組織の老化が原因で生じる場合が多いです。そのため、交通事故後に腰部脊柱管狭窄症の症状が現れたとしても、交通事故によるものではなく因果関係がないという理由で、腰部脊柱管狭窄症の賠償が否定されがちです。また、仮に腰部脊柱管狭窄症と交通事故との因果関係が認められたとしても、年齢によっては、もともと発症していたのではないか、あるいは、交通事故により発症したのだとしても被害者の素因が発症に影響しているのではないかと疑われ、損害賠償金を減額されてしまうおそれがあります。 そのため、腰部脊柱管狭窄症で適正な賠償を獲得することは容易ではありません。 こうした損害賠償金の減額を防ぐためにも、ぜひ医療に強い弁護士にご依頼ください。 弁護士、特に医療に強い弁護士に依頼すれば、腰部脊柱管狭窄症の発症と交通事故との因果関係の証明や、被害者の素因が発症に影響していない等の証明に尽力してくれます。 医療に強い弁護士の多数存在する弁護士法人ALGに、ぜひご相談ください。
交通事故による腰部脊柱管狭窄症の後遺障害が認められた裁判例
交通事故を原因とする腰部脊柱管狭窄症の後遺障害が認められた裁判例をご紹介します。
【横浜地方裁判所 平成28年10月31日判決】
<事案の概要>
左折中の原告運転の普通乗用自動車に、被告運転の普通貨物自動車が追突した事故により負傷した原告が、被告に対し損害賠償を請求した事案です。 本件事故により、左下肢痛、しびれといった神経症状の後遺障害が残ったと主張する原告に対し、被告は、原告の主張する症状は、本件事故に基づかない腰部脊柱管狭窄症等により認められる一般的症状にすぎず、本件事故によって後遺障害は生じていないと主張したため、争いとなりました。
<裁判所の判断>
裁判所は、原告の後遺障害の有無について、次の理由から、原告には14級9号「局部に神経症状を残すもの」の後遺障害が残ったと認めるのが相当であると判断しました。 ①被告車に追突された際、原告は、もっぱら左側の歩行者等に注意を集中させ、身体をやや左に捻り、左側をのぞき込むように前かがみになった体制をとっており、原告が衝突直後に痛みを訴える声を挙げていることから、原告の頚部や腰部に相当な衝撃があったと推認できること ②医療記録によれば、原告は、事故当日から頚部及び腰部の痛みを訴え、受傷後3週間が経過したころから左下肢の症状が現れ、症状軽減のため処方薬の変更や増量等の措置が取られていること ③本件事故前に治療を要する疼痛の症状はなかったが、本件事故後に撮影した腰椎MRIの画像診断の結果、椎間板の後下方への脱出・椎間板の軽度の骨棘を伴う膨隆・脊柱管の狭窄が認められたこと ④こうした治療経過や原告の訴える症状の部位・内容は、本件事故の態様や画像診断の結果とも整合していること ⑤原告が症状固定の診断を受けた後も左下肢の症状が残存し、通院を継続していること また、被告は、後遺障害が残存するとしても、原告の素因が寄与したものであるため、損害賠償金の減額をすべきと主張しました。しかし、裁判所は、原告には確かに事故前から加齢性変性があったと考えられるものの、変性が年齢相応の変化を超えるものであると認めるに足りる証拠はなく、本件事故前には、原告の素因を原因とする症状が生じていなかったこと、及び本件事故の損害の内容や程度を考慮すると、素因減額をすることは相当でないとし、損害賠償金の減額を認めませんでした。 老化による脊柱管の狭窄が認められる場合でも、素因減額による損害賠償金の減額がなされなかった事例です。
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